天かけるオウムガイ


爆発の中で、オウムガイは飛び出した。
サクラがオウムガイの解析をして、
操作を頭の中に直接流し込んでくる。
ウゲツは最初こそ戸惑っていたが、
だんだんオウムガイの操作をなじませていることに気がつく。
出力は弱く、高い空の大きな戦艦まで、まず届くのかと思わせる。
でも、チャイをはじめとして、何かみんなで考えているんだ。
そして、ウゲツもまた、
空でやるべきことを自分で見つけ出さないといけない。
高度を上げる、戦艦の見張りに見つからないように。

サクラがそっとウゲツの手を操作した。
サクラは伝える。
天狼星の町から、電力の塊が来ると。
それをオウムガイにぶつければ、構築式と仕組みで、
オウムガイは、爆発的な能力を一時的に使える。
「方向は」
ウゲツがたずねる。
サクラが何かを探っているのがわかる。
サクラは停止を命じる。

そこに、風を切り裂くような爆音。
ウゲツはとっさに、オウムガイで盾を作ろうとする。
光と爆音にわけがわからなくなりながら、
ウゲツはオウムガイを離さない。
そして感じる、電装のオウムガイの出力が、今までの比でないことを。
オウムガイは電力を巻き取ったのだ。

「いける」
ウゲツはつぶやく。
オウムガイの出力を確かめる。
サクラが中の様子を確認している。
「これなら」

ウゲツは思いっきり、動力のたがをはずした。
加速加速、上へ上へと流れる星のようにウゲツは飛ぶ。
上へ、上へ、ネココを取り戻すのは、ウゲツの意志。
そして、町の誇りをかけて電力が届いた。
「暴れてやる」
ウゲツは知らずにつぶやいていた。
かなりの加速を得たオウムガイが、
解放されつつある、ウゲツの手によって、凶暴な乗り物になる。
サクラは面白そうに頭の中で笑っている。

「ネココを奪っていったことを、後悔させてやる」
ようやく、戦艦ミノカサゴの中が騒々しくなった。
そうこなくっちゃおもしろくない。
宙返りすらしながら、
オウムガイは戦艦の周りを回る。
サクラが入り口を見つけたようだ。

「いくぞ」
誰が善も悪もない。
ただ、ウゲツは何かが切れてしまったかのように、
あるいは何かから解放されたかのように、
生き生きと、戦いを仕掛けている。

ウゲツはオウムガイを、自律操作に切り替えると、
頭の中にサクラを仕込んだまま、オウムガイからミノカサゴへと飛び乗った。

そのとき重力を無視していることも気づかずに。
ウゲツの目が見開かれ、
その目にぎらぎら光がともっていることも気がつかずに。


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