花と出鱈目


マルは考える。
考えて考えて考え抜く。
何かできることはないか。
ガラクタに守られているだけでなく、
この植物園にいるだけでなく、
何かマルにできることはないかと考えていた。
多分危険と思われることは、
ガラクタが遮断するだろう。片っ端から。
電波がちりちりしているだけで、植物園に閉じ込めるガラクタだ。
居心地は悪くないのだけれど、
不満がないのが不満だ。
何かマルにできることはないか。
マルは考える。

ガラクタは、植物園の中に布団を持ち込んできた。
マルのためだけというのが、くすぐったくもある。
夜も遅いから、ちゃんと寝ないといけない。
ガラクタはマルにそう言い、部屋に戻ろうとする。
マルはガラクタを引き止める。
袖の端をつかんで。
みんなががんばっているのに、何もできないのは嫌だ。
マルは訴えるが、ガラクタは耳をかさない。
ここが一番安全なんだと、ガラクタは説く。
マルは布団を握り締める。
悔しくて、何もできなくて、ただただ無力で。

「マル」
ガラクタが優しい声をかける。
「君は花の番人になってくれ」
ガラクタは、そんなことを言う。
マルは、『花』というものを知らない。
ガラクタのほうを見ると、ガラクタはすっと植物の一つを指差す。
「この、幾重にも重なっているこれが、花というもの」
「はな」
「これを守っていてくれないか?」
「これは、何をするの?」
マルが問うと、ガラクタは説明しようとして、困った顔をした。
長くなると思ったのかもしれない。
「花は、受け止めるんだ」
困ったガラクタは、多分、出鱈目を言っている。
「受け止める?」
「小さなものなら、きっと受け止められる」

ガラクタの出鱈目に、マルの脳裏にひらめいたものがあった。

「ガラクタさん」
マルは、布団を示し、
ガラクタにひらめいたそれを伝える。

それは、布団をまずは集めることから始める。
ガラクタはマルを植物園に残し、
マルのひらめきを形にするべく、走り出した。
うまくいけばうまくいくかもしれない。


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