暴れる後先
ギムレットは悪態をついた。
「バカヤロウ」
そして、カミカゼの連絡のいっているであろう、違法電波の連中に、
これまた違法な回線を使ってさらに連絡を取る。
合法な電波でぬくぬくしてきた連中も、
違法な電波でにやにやしていた連中も、
国のやり方には不満を抱き、ひっくり返してやれと。
国を転覆させるのではなく、そんな大それたことは望まず、
ただ、国の奪っていったものを取り返すくらい、
そのくらいは望んでもいいのではないかと。
ささやかな反旗。
「みんなバカヤロウだ」
ギムレットは言いながら、半壊した店の中の、回線をあちこちつなげる。
フウセンが今頃驚いているだろうか。
それとも、この程度で驚かれていたら、
町の電波は任せていられないかもしれない。
「どいつもこいつもみんなバカヤロウだ」
ギムレットは悪態をつきながら、
口の端が笑みになるのを押さえられない。
こんなに電機や磁気がたまってたんだと。
鬱憤も同じくらいたまってたんだと。
合法の影に隠れて、暴れだしたいものが隠れていやがったんだと。
ギムレットは配線をつなぐ。
違法な輩が、どんどん電気を流してくる。
ギムレットは電装の配線をばらし、
店の大穴によって壊れた機器をまたばらし、
全部をフウセンのほうに向ける回線につなげなおす。
正直、すべての電気がおさまるまで持つかどうかはわからない。
でも、町の愛すべきバカヤロウどもの力を乗せるくらいしないと、
ギムレットの誇りが許さない。
違法電装技師。
店に大穴をあけたのは、後先考えなかったからだけども、
もっと後先考えない連中がいる。
電気を全部送ったらどうなるか、
考えない連中がいる。
みんなみんなバカヤロウで、
空飛んでいったバカヤロウをちゃんと帰ってこさせようとする。
みんな後先考えない。
この町がどうなるかよりも、
まずは自分がどうしたいか。
偉大なるハコ先生はそんな事言ってたか。
ギムレットは意地悪にそんなことを考えるが、
さっき瓦礫からギムレットの寝床を持っていったハコ先生に免じて、
それは誰にも言わないでおくことにした。