たたかうもの
フウセンは、急激に集められる電気や磁気、
その力の制御に追われていた。
だから、寝床の布団類が持っていかれたのも、
気にも留めなかったし、いまさら気にかける余裕もない。
それほどフウセンは大変だった。
さきほど、カミカゼが走って伝えたそれは、
再び放電機をつかうということ。
今度は違法なものもまとめて送る。
カミカゼは肩で息をしながら、それを伝えると、
また、どこかに向かって走り出す。
フウセンはそれを見送り、集められる電気の出力に恐れおののき、
これほどの電気の力がまだ眠っていたことに、
フウセンはこの町の可能性を見た気分になる。
この町の力は、さっき放った出力で終わりではない。
まだいける。
フウセンは機器の類から、町の底力を感じる。
フウセンは電気の微調整をする。
違法なものは、数値が暴れている気がする。
おとなしい電気だけではない。
わかってはいるが、いざ目の当たりにするとものすごいものだ。
みんなが浴びている、電波とは違う、暴れた違法電波。
これを乗りこなしてこその、電波局のフウセンだろう。
フウセンは少し膨らんだ身体に、汗を浮かせる。
緊張からくるものだ。
電波局が過剰な電気でぴりぴりといっている。
違法な連中に号令かける老頭も、
それを伝えて回るカミカゼも、
そうだ、取締りをしているカガミはどうしているだろうか。
これが終わったらゆっくり横になって眠りたいな。
布団はどうしたっけ、知らない、床でもいい。
フウセンの中でぐるぐる思考が回る。
ハコ先生は元気かな。
フウセンは、背の高いハコ先生を思い出す。
ずいぶん前にここの写真を撮りに来た、マルちゃんも元気かな。
マルの無邪気な笑みも思い出す。
フウセンはなかなかここからでられない。
電波局の責任があるから。
でも、と、フウセンは思った。
この大仕事が終わったら、
みんなに会いたいなぁ、と。
みんなどうしているかな。
怖い思いしていないかな。
フウセンは、機器を見据える。
まだまだ使うには数値が暴れている。
フウセンのその顔は、戦うもののそれになっていた。