陶頭の翁とナナイロの宝 1


昔々。
昔の日本のようなどこかであるけれど、
ちょっと違う王国がありました。

その王国には古くから伝えられていることがありました。
この王国にはナナイロの宝が眠っている、と。
王様が何人も歴史とともに変わりました。
王様によって様々でしたが、
ナナイロの宝を探して国を掘りまくる王様、
無視する王様、
いろんな王様がいました。

しかし、誰もナナイロの宝を見つけることは出来ませんでした。

さて。
今の代の王様は、ナナイロの宝を追う方の王様でした。
国中の文献をあさり、
国中の賢人の声を聞き、
国土をを掘り返して、
どうにか宝を見つけんとしていました。
この国は、今、とても貧しく、どうにかしないといけない。
そんなわけで、王様も必死なのでした。

ところかわって。
王国のはずれのほう。
サンダーと言う名のおじいさんがいました。
二つ名として陶頭の翁といいます。
サンダーおじいさんは、焼き物を焼いて暮らしています。
王国のはずれのほうで、サンダーおじいさんの窯の煙が、
晴れていれば、のどかにのぼっています。

サンダーおじいさんは今日も粘土をこねています。
粘土はそれだけでは使い物になりにくいものです。
こねて、形にして、焼いて、様々の手を加えて、
土の塊が生まれ変わるのです。
サンダーおじいさんの焼き物は、
土の息吹が感じられると評判でした。

さてさて。土の息吹と言う言葉が、
どう話がこじれたものか。
そんな土いじりをしているサンダーおじいさんの元に、
王国からの役人がやってきました。
なんでも、陶頭の翁は、大地の呼吸を読む賢人であるといい、
賢人の知恵を拝借し、
貧しい王国を潤す、ナナイロの宝を探し出したいと。
役人に頭を下げられ、サンダーおじいさんは困り果てました。
けれども、サンダーおじいさんは、
困っている人を見捨てることは出来ません。

「及ばずとも力を貸しましょう」

王国のためなんて、大それたことを考えたわけではないのです。
ただ、サンダーおじいさんは、自分の小さな力が役に立てばいいと。
きっかけは、そんなところでした。


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