陶頭の翁とナナイロの宝 3


ある日のこと。
王様は陶頭の翁、サンダーおじいさんを呼びました。
どうも陶頭の翁は、ナナイロの宝の正体を知っているらしいと。
そんな噂がまことしやかに語られているからでした。

王様の前に、サンダーおじいさんは包みを持ってやってきました。
王様は、ナナイロの宝かと思い、包みを開けるようにと命じました。
そこにあったのは、
粘土が一塊。
王様はぽかんとして、次にふつふつ怒りがこみ上げてきました。
怒鳴ろうとすると、サンダーおじいさんは言うのです。
「この王国には、最高の焼き物のための粘土が眠っています」
みんなで調べました。
賢者も、現場の人も、そこから派生するいろんな人たち。
みんなで調べました。
そして、結論が出ました。
ナナイロの宝は、最高の土であるということ。
この土で焼き物を作れば、それは国を潤す宝となり、
作る人、使う人、売る人、買う人、
全てを幸せにすることが出来るに違いない。
この国の人々は、人の和を尊ぶことが出来る。
この国には、焼き物と言う文化がある。
この国の古い国王達は、国土を掘って、
結果、土を取りやすくしてくれた。
「遠い時間の重なりです」
サンダーおじいさんは言います。
「誰が欠けても、ナナイロのこの宝は見つけられませんでした」
王様はうなずきました。
時間、季節、人のつながり。全てのつながり。
それも含めての、ナナイロの宝、そうに違いない。
そして、王様は焼き物をこの国のひとつの産業にしようと、決めたのでした。

土をこね、焼き、手間をいくつもいくつもかけて。
最高の土は最高の焼き物へと姿を変えます。
それは、ナナイロどころかいくつもの色合いを持った、
この王国でしか見ることの出来ない、まさしく宝になりました。

当のサンダーおじいさんは、また、王国のはずれに帰って、
のんびり焼き物を焼く生活に戻ったといいます。

そして、この王国には、ひとつ風習が残りました。
それは、
仲間を集めて酒を飲むときは、
安い酒であっても、
『陶頭翁』と言う文字の入った杯で酒を飲む。
そうすると、縁起がいいというものです。
この王国へ来た際には、お土産に、ぜひ。


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