虹の下
空。
そして、虹のアーチが美しく。
思ったとたん、僕らは落っこちて、
草や花のいっぱいのところに受け止められた。
手をつないだまま、ひっくり返った僕らは、
はじけたように、大声で笑い出した。
もう、何がなんだかわからないけれど、
ただただ、嬉しくって。
僕らの笑い声が、虹の丘に響く。
ここまでやってきた。
空が、きれいに広がっている。
森すら抜けちゃったんだなぁと僕は思う。
あの広い広い森にも終わりがあったんだ。
木々が隠していた空は、
こんなにも広かったのか。
「クロネコ」
「なに?」
「開けようか?」
サカナが、ちょっと困ったように、箱を持っている。
「うん、サカナの探していたものが、あるはずだよ」
「クロネコはそれでいいの?」
「なんで?」
僕は本当にわからない。
「えっと、クロネコは、何を望んでいるの?」
サカナは問う。
考えるまでもない。
僕は、サカナの目をじっと見る。
やっぱりサカナの目はきれいだ。
「僕は、サカナに一目惚れしていました」
僕は、大真面目に告白する。
「だから、一緒に手をつないで、走れただけで、もう十分…」
言いかけたところで、ぽこんと何かが投げつけられる。
「ばかっ!」
サカナに怒られた。
大事な箱まで投げつけられた。
「あたしの気持ちまったく無視してるじゃないの!」
僕は首をかしげる。
「すみません、サカナの気持ちはよくわかりません」
「うー…」
サカナは顔を真っ赤にして、
「クロネコに、ありがとうとか、かっこいいとか、大好きだとか」
サカナが列挙する。
「ぜーんぶまとめた気持ちを、どういっていいかわかんないの!」
ああ、それって。
「サカナ」
僕は、投げつけられた箱を、サカナに返す。
「僕らは多分、手に入れたんだと思うよ」
サカナはじっと僕を見つめて、
箱を受け取って、微笑んだ。
「開けるよ」
虹の丘で、サカナは宣言する。
多分僕が思うに。
箱のこれは答え合わせに過ぎない。
僕らの手に入れた答えが、
とりあえず、求めたそれなのかの。
そして、僕らは。
手に入れたこれを、愛を呼ぶのだろう。