灰色の追っ手


灰色の人影がわらわらと追ってくる。
多分僕たちが時計を壊したから、
それで追ってくるのだろう。
虹の丘は走っても走ってもまだ遠く。
何かが壊れたように、遠く。

「虹まで行かせるな!」
灰色の人影が言う。
「あいつらを次のシステムにするんだ!」
「ばらして、時計に組み込むんだ!」
「愛を知らない今のうちなら可能だ、つかまえろ!」
なんだか、やつらの情報だだ漏れだなと僕は思う。
思うに。
やつらは思いを通わせあうこととか、
想像力がないのかもしれない。
だから、言葉にしてべらべらしゃべらないと、
意思の疎通が出来ないのかもしれない。
そりゃ、言葉にしないとわからないこともある。
けれど、言葉の使い方はそうじゃないだろうと僕は思う。

「クロネコ?」
「なに?」
「笑ってる」
「うん。なんか、おかしいなって思って」
本当におかしい。
僕らが捕まるなんてやつらは思っているのか。
「灰色の、ばらして組み込むとか…こわい」
僕はサカナの手をぎゅっと。
「こわくない、僕がこの手を離さない」
すっと、虹が近づいた気がした。
ああ、そうか。
僕はなんとなくわかった。
「サカナ、絶対虹の丘に行けると、信じるんだ」
「信じて、いいの?」
「箱を開けて、君は探していたものを見つける」
「うん」
「そのためには、絶対行けると思わなくちゃダメなんだ」
「絶対」
「僕は君を信じる、君も僕を信じて、そして、虹まで届かせるんだ」
「うん!」
「愛を、見つけるんだ! 行くよ!」

僕たちは、虹の丘を目指す。
走る。魂まで燃やして。
魂がつないだ手から混ざって。
僕はサカナの欠片を見た。
愛に満ちた町で、サカナは一人きりだった。
僕も、森で一人だった。
それをさびしいとは思わなかったけれど。

サカナを知ってしまったら、
僕は、彼女無しでは生きられない。

僕らは、二人だけのリズムで走り、
思いっきり跳躍する。
焦りも恐怖も、全てがとけて。
僕らはあるべき場所に向かわんとしている。


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