白と黒の時計
僕らは虹の丘に行くべく、
二人で森の中を走る。
地図があるわけじゃない。
けれど、二人で決めた道を一緒に走る。
虹の丘を着いたら、箱を開ける。
そうしたら、探していたものが手に入ると言う。
サカナが探していたものは、きっと愛だから、
きっと愛が手に入るのだろう。
僕にはちょっと想像ができないけれど。
僕らは、森の中、
カチカチと言う音を聞く。
僕とサカナは顔を見合わせて、
音のするほうへ向かう。
ちょっとしたことなら、言葉がなくてもどうにかなる。
森の中。
大きな大きな時計が二つあった。
片方は白く、片方は黒く。
その時計の間に道があり、
その先にちょっとだけ、虹が見えた。
「この先が虹の丘?」
「そうみたいだね」
「それじゃ、いこう」
僕はうなずいて、走り出す。
時計のカチカチが、声のように響く。
有りか無しか。
男か女か。
0か1か。
お前はどっちだ。
問われているのだろうか。
僕は考える。
答えはこれだ。
僕は、サカナの手を強く握る。
「今僕は、一人であり、一人でない。この手は魂も混ぜるものだ」
時計が、がらんがらんと鐘のようなものを鳴らす。
行ってしまえ狭間のもの。
時計は言う。
我々には理解の出来ないものをお前たちは持っている。
その手を離すな、狭間のもの。
さすれば、理解を越えた何かを手に入れるだろう。
時計の声がおさまって、
僕たちは時計の間の道を行く。
虹の丘まであと少し。
「システムに異常発生!システムに異常発生!」
大きな時計の中から、
灰色の人間みたいなものが出てくる。
たくさん、たくさん、
「原因は?」
「0でも1でもない存在」
「あいつらだ!」
「あいつらが時計を壊した!」
「いくよ!クロネコ!」
サカナは僕の手を握りなおし、走り出す。
「うん、行こう!」
僕らは結果として時計を壊したらしいけれど、
今僕は、一人であり、一人でない。
この手は魂も混ぜている。