ずっと自由で 10


夏祭りは日が沈んでも大騒ぎ。
演奏を終えた晃司は、僕と合流した。
夏祭り会場から離れて、
ブランコのある公園に、僕らは落ち着いた。
スポーツドリンクを片手に、
ブランコに座って。
晃司はうまそうにスポーツドリンクを飲んで、
ため息ひとつ。
僕は話のとっかかりを作る。
「すごい演奏でした」
僕が言えば、晃司はニヤリと笑って、
「だろ?」
と、ひとこと。
「僕は、ヒデの魂を見た気がしました」
「そっか、お前も見たのか」
僕は、やっぱり、と、思った。
観客席にいた僕と、
絶叫する晃司は、
あの時同じものを感じていた。
僕も彼も、
あれはヒデの魂だと思っている。
「真人は、ヒデのプロモビデオ見たことあるか?」
「はい」
「ヒデ、ステージで本当に楽しそうに笑ってるんだよ」
僕は思い出す。
プロモビデオで歌い、本当にうれしそうに、楽しそうに、笑うヒデ。
「なんか、俺、ステージでそんな風に感じたんだよ」
「ヒデが連れて行ってくれたんですよ」
「そっか、そうだな」

夏祭りの一瞬の輝き。
高校生の僕らの、この夏。
高校二年の夏は今年しかない。
それは当たり前なんだけど、
僕はこの夏、
かけがえのない宝物を手に入れた。

 ever free 何処にfree? ever free

僕らはしがらみの中で、あがき続ける学生だ。
でも、こんな風に自由になることもできる。
音楽はすべてを越えていく。
僕の文章もそれができるだろうか。
僕がそう思うと同じくらい、
晃司も音楽の自由を探している。
この夏、僕らは自由のかけらを見つけた。
キラキラ光る自由は、
とんがっているようにも見えた。
自由とは。
僕らはまだ答えを知らない。
知らないけれど、自由にあこがれる。
もしかしたら、僕らは自由の中にいるのかもしれない。
気が付かないだけかもしれない。

「なぁ真人」
「はい」
「自由はどこにあると思う?」
僕が思う、その問いの答えは、
「ever free in your sight」
「うん?」
「見渡す限り、だと思いますよ」
「そっか」

自由はどこにでも。
僕はそう思う。
この世界中どこにでも。
行けるんだったら宇宙まで。
どこまでも、僕らは自由だ。

「晃司」
「ん?」
「最高の夏でしたね」
「ああ」

祭りの喧噪を遠くに、
僕は星を数える。
星の向こう、
ヒデが微笑んでいる。

僕らが駆け抜けた、
最高に自由な夏の物語。


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