ずっと自由で 09


焦げるほど暑い、夏祭り当日。
山車が出て神輿が出て、
踊って騒いで。

僕にとって夏祭りは、
子供の楽しみだと思っていた。
よくわからないおもちゃと、
身体に悪げな食べ物。
少しだけ大人になると、
そういったものが恥ずかしくなって、
インドアの僕は夏祭りを、ただうるさいものとしていた。
でも、こうして今年、夏祭りに来て、
改めて人の生命力に圧倒された。
これはパワー。
夏という生命にあふれた季節と、
生きていることを爆発させた祭り。
そうか、だから夏祭りがずっとあるのか。
このパワーを知らないで文章は書けない。
経験は何よりも、文章の糧になる。
文芸部の悲しい性分だけど、
文章にどれだけできるかを計ってしまう。

僕は、夏祭りを馬鹿にできるほど、文化人じゃない。
ただの学生で、まだ子供で、
祭りの喧騒にソワソワする程度には夏祭りを欲していた。

僕はこの祭りで、一番、生命が爆発する場所を知っている。
夏祭り特設ステージで、
軽音部が演奏する。
高校生のバンドだ。
ファンがたくさんついたバンドではない。
でも、僕は予言する。
この祭りで最高の熱狂があるのは、きっとそこだ。
僕はステージの前に陣取り、
軽音部が出てくるのを待つ。

軽音部は4番目に現れた。
あの時、教師に怒られた爆音。
その爆音をまとって、軽音部が、晃司が降臨する。
人を殴るような音。
音量だけでなく、ショックを与えるような音。
この世界に何かを残そうとする獣の爪痕の音。
歌というより絶叫。
甘い馴れ合いを越えたように聞こえる。

 デタラメと呼ばれた君の自由の
 翼はまだ閉じたままで眠ってる
 ever free この夜を突き抜けて
 目覚めれば 飛べるのか FReeに?

僕らはこの瞬間、
何もかもから自由になる。
夏の力と、爆音を共にして、
僕らはどこまでも飛べる。
心だけなら宇宙に行ったかもしれない。
晃司もその自由を感じているのだろうか。
どこまでも、どこまでも。

僕らには翼がある。
デタラメと呼ばれた翼。
きっとこの時。
僕らの翼は目覚めて、
ヒデの近くに行った。
僕らは、何か輝きに触れたに違いない。


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