ずっと自由で 08
夏を走るように。
駆け抜けるような季節。
夏祭りの前日。
僕は夏祭りの会場に来ていた。
ステージはあらかた出来上がっていて、
音響さんのリハーサルなんてしているみたい。
僕は部外者。
会場設営の関係者でもない。
立ち入りは禁止じゃないみたいだけど、
祭りのエネルギーが高まっているのを感じる。
晃司たちはどこにいるのかな。
僕は会場の近くを探す。
どこで何をしていると、聞いたわけじゃない。
そういえば電話番号の交換をしたわけでもない。
僕らの関係は、どこでつながっていて、
いつまで続くんだろう。
「なんだ真人、いたのか」
後ろからかかった声は晃司。
「本番は明日だぞ」
「えっと……なんとなく」
「そっか」
晃司は詮索しない。
かわりに、
「夏が終わったら、お前、どうするんだ?」
「どう?」
「軽音部にも来なくなるだろ?」
「ええと…」
僕は言葉を選び、そして、
「友人に会いに行くのは、だめですか?」
僕の精一杯の言葉。
それは、これからも友人でいてほしいという、
臆病な僕なりの言葉。
晃司は、ポカンとした後、噴き出して、
痛快なくらい笑った。
「友人、そうだな!」
つられて僕も笑った。
消えてゆく 最初のメモリー
何処へ行きたいのだろう?
笑い疲れた僕と晃司は、
くだらないことをまた話した。
いつか僕と晃司の道が離れるかもしれない。
それは、卒業かもしれないし、
もっと後かもしれないし、
場合によってはもっと早いかもしれない。
それでも。
僕らは友人だ。
今ここでこうして、
語り合い、笑いあい、
うまくいかないことに苛立ち、
理不尽には怒る。
いつか僕らの記憶から、
この季節が消えたとしても。
僕らが行きたい場所は、
きっとヒデが微笑む未来だと思う。
僕らが出会って友人だったことすら忘れても、
きっと未来でまた友人になる。
僕がそんなことを言ったら、
晃司は、
「ばーか」
と、ひとこと。
そして、
「ずっと友人で、ずっと自由なんだよ、俺たちは」
僕は晃司にかなわないなと思った。