無題
僕には色がない。
気がついたら僕はこの世界にいて、
ふわふわと漂っている。
僕にはあたたかな思い出が少し。
それ以外は何もない。
色も何もなくて、
誰にも見えないだろうなと思う。
僕はなんなんだろうね。
小さくて、小さくて、
本当に小さな僕。
世界は本当に大きくて、
僕はどうしたらいいか、戸惑う。
僕には名前もない。
いつかなくしちゃったのかな。
僕は思い出に、友達に、会いにいこうって、
生まれたときに決めたんだ。
決めたはいいけれど、
広い広い世界で、
僕の思い出を持っている人なんているのかって。
それでも、僕は会いにいかなくちゃいけない。
僕のことが見えなくても、
僕の思い出の中の、
友達に、会いにいくんだ。
そうして行き着いた先が、この町で、
物が命のように振舞っていたり、
そんなへんてこな町だけれど、
僕は、ひとつの言葉を頼りにこの町にいる。
「ファイアの日に会える」
その日になればきっと友達に会える気がするんだ。
きっと、きっと。この町で。
僕はどこにだっているから。
どうか、僕を感じたら、
僕に名前をください。
僕のことを呼んでください。
心の中でだけでいいです。
ファイアの日。
その日に会えると、僕も信じています。
思い出が妄想だとしても、
人はその思い出を頼りに生きている。
そうでしょ?
僕もそうなんだ。
小さな思い出。
あたたかな友達。
僕にとって世界で意味があるのはそれだけで、
そこから今、世界を始めようとしています。
これから僕がどうなるかはわからないけど、
僕はどこにでも行ける。
そう思うんです。
僕はなんなんだろうね。
いまだによくわからないよ。
けれど、これだけ。
僕は君の友達。
出来れば君をあたたかな感じで包んであげたい。
ちょっと非力だけど、僕は君の友達。
ファイアの日に会える。
会えるさ。きっと。
そして僕たちは、また始まるんだ。
何度だって始まるんだ。
そんな気がする。
何度消えても、何度だって生まれ変わるんだ。
僕は、いる。
僕は多分、君の隣で微笑んでいる。
見えなくても僕はいる。
古い友人も思い出も消えることはない。
多分、僕もそうなんだと思う。
全てに感謝したい。
心、から。