フロッピーのつぶやき
僕はなんなんだろうね。
たとえば、物が記録できればそれは記録媒体さ。
大きく入ればそれは大容量記録媒体なんて、
ごたいそうな名前まで持てる。
小容量記録媒体ってなんだと思う?
つまりは、時代に置いてかれたゴミなんだよ。
僕の容量少ないから、
あんまり多くは語れないけれど、
まず自己紹介。
僕はフロッピー。
とりあえずサンテンゴ。
イッチョンチョンがいいかな。
とりあえず、僕はフロッピー。
ちょっと昔の記録媒体さ。
うん、最初に言ったけど、
僕はもうゴミ同然でさ。
それならそれで仕方ないと思うんだけど、
空っぽのままゴミになっていくフロッピーという僕に、
何か入れてあげようと思ってさ。
うーん、僕の感性も容量少なくてわからないけど、
フロッピーは何か記録しないと、何もないじゃないか。
よくわからないけれど、そんな気持ち。
君の周り、
そう、これを読んでいる君の周り。
多分物を入れる箱とか、あると思うんだ。
小さければ小物入れだね。
小物の中でも、小物すら入らなくなった小さな箱。
たとえるなら、僕は小さな小さな箱になっちゃったんだと思う。
僕の中は空っぽで、満たしようにも何もいれられないんだ。
あまりにも僕が小さすぎてね。
僕はなんなんだろうね。
中に何にもない存在だけのもの。
誰も覚えていない記録媒体。
何も記録していない記録媒体。
空っぽの僕が、不意につぶやけるこの話を、
君はなんと思うだろう。
プログラムの小物入れにすらなれない、
僕、フロッピーのちょっとした呟き。
それ以上でもそれ以下でもない。
僕はフロッピーという僕の中に、
今これを読んでいる君をほんの少し記録する。
たぶん、たいしたことじゃないと思うんだ。
君を友達って、覚えていたいんだ。
友達の記録から、
僕は容量の束縛を超えられるんじゃないかと思う。
僕は感じる。
君が、友達がどこかにいるということを。
僕は無限の海に飛び出そうとする。
すべてが記録されているかのような海に。
僕の言葉は少ないけれど、
僕は無限の海に、今、飛び出そうとしている。
僕は小さな記録媒体に過ぎない。
フロッピーの中に、何もないかもしれない。
僕の中にやってくるのが、誰かの妄想、それでいい。
妄想の海にフロッピーが沈む。