はろうぃん
怖いということは一体どうやって引き出せばいいだろうか。
文章を書きながらとある物書きは思う。
びっくりさせる、血まみれで痛そうに見せる、何かが死ぬ。
そういうのだけではないと思いながら、
物書きは悩む。
そもそも、怪談とは、おばけ物語とは。
怖い話でなければいけないだろうか。
どうしても不思議な話になってしまうなと、
物書きは悩む。
おばけと言うものが、とても曖昧な代物で、
おばけ単体で怪談にするのは、とても難しい。
怖いのは、人なんだろうか。
使い古された表現ではあるけれど、
他人のことは永遠に理解できない。
理解できないものを人は恐れる。
人は、人が怖いのかもしれない。
それを描くには、この物書きは少し力不足だ。
昼間、気晴らしに町に出たら、
町がハロウィン一色になっていた。
ワクワクするほど子供でないけれど、
おばけが満ちるお祭りと言うのも、悪くないと思う。
オレンジ色のカボチャが笑っている。
ハロウィンの由来を言うことが出来なくても、
おばけのお祭りを楽しむことは出来る。
ハロウィンにあわせた怪談ならば、
不思議なおばけの物語であってもいいかもしれない。
ゆかいなおばけのお祭りなんだから。
家に帰ると、迷子のつくもがみがうろうろしている。
「また誰か拾ってきたかな」
物書きはため息ひとつ。
市松人形がとことこと出てくる。
「鬼の方が拾ってきたといわれて…」
「また? 燃やして供養するとかわいそうってあいつ言うしさ」
物書きは舌打ちしながら玄関を上がる。
「嘘ついたら舌をずたずたにすればいいのよ」
「僕が腐らせる?」
家の奥からもろもろと出てくるものたち。
彼らはゆかいなおばけたち。
「世の中ハロウィンだってのに、あんたらは変わらないねぇ」
物書きはあきれたように。
「僕らの哲学はそうそう変わらないよ」
男子学生の幽霊は、得意げに。
「おばけは、どんなときであっても楽しむもの!」
彼らはそういって笑う。
物書きはパソコンに向かう。
「さぁて、書くか」
どうしても不思議な物語になってしまう癖がどうにかならないものか。
おばけはゆかいなものだからしょうがない。
ハロウィンの夜だけでなく、
いつでもおばけは君のそばに。
どんなときであっても、彼らは楽しむことを忘れない。
ここにいるよ。
お菓子をくれなきゃイタズラするぞ。