怪談:あみだくじくずかご


選ぶ権利は君にある。
あるけれど、君が望んだものとは限らない。

あみだくじ。
縦線横線たどっていって、
一番下に選んだ結果。
何が書かれているかは、作った本人しか知らないし、
どれが選ばれるかは、神様しかわからない。
いや、阿弥陀様かな。

ここに転がっている男女、合わせて7人。
彼らは人間の屑だと、依頼人は言った。
依頼人は夫婦。
息子がいじめで殺されて、
いじめていた人間に復讐をしたいらしい。
依頼を受けた私は復讐屋。
金さえもらえれば、
復讐のプランを立てて実行する職業。
そしてここは、廃工場。
周辺には何なくて、
誰も来ることはない。
そういう風に根回しをしておいた。
何せ、依頼の報酬は桁違いだった。

そして、今日この時、
夫婦は息子の仇をとる。
私は、縄で縛って身動きのできない男女に、
蹴りを入れて覚醒させる。
布でさるぐつわもかませてある。
くぐもった声をあげながら目を覚ました男女に、
私は説明を始める。
「今から、君たちの命運は、あみだくじに託された」
もがもがと非難のような音。
「あみだくじの下に、このご夫婦が君たちの運命を書いてくれた」
私は言葉を区切り、
「君たちがいじめて殺した男子生徒の御両親だ」
瞬間、何かを理解したらしい眼差し。
逃げようともがく。
芋虫がジタバタするように。

「それでは始めよう。まずは君」
私は手ごろな距離にいた男に顔を寄せ、
「選びなさい。屑でも選ぶ権利はあるのだよ」
男の、涙と鼻水とよだれ。
「男子生徒は選ぶことすらできなかったのだよ」
顔を寄せる私、その裏で、
拷問道具を持った両親。

「さぁ、このあみだくじで屑を始末しよう」

屑はくずかごへ。
処分すればいい。
どれを選んでも地獄。
強い憎しみが時間で解決されたことなどない。

屑を始末した後、この夫婦がどうなるのかなんてわからない。
ただ、この会場の後始末は、大変だろうなと私は思った。
さて、心ゆくまで復讐を楽しんでもらおうか。

あみだくじを選んで。
選ぶ権利はあるけれど、望んだものとは限らない。


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