怪談:じんましん
かゆいかゆいかゆいっ!
さっきから僕はジンマシンに悩まされている。
どこがかゆいって全部かゆい。
当然医者に駆け込んだ。
注射もうった。
飲み薬も飲んだ。
薬が効くまでおとなしくしてくれるジンマシンでもなく、
いらいらするほどのかゆみが、全身をくまなく覆っている。
アクロバットな格好をして、身体のあちこちをかきむしる。
服はさっき全部脱いだ。
服の上からじゃ、かくにもかけないほどのかゆみだ。
転がって、悶えて、痙攣して、かきむしって。
全部総合するとかゆいんだ。
なんか、頭の後ろで何かよぎっていった。
ゾンビゲームだっけ。
あれもかゆいって言ってたのかな。
かゆうま?
あー、それでか。
かくのやめたらやっぱりかゆい!
俺ゾンビになっちゃうのかな。
身体かきむしりすぎて、
結構出血をしている気がする。
このままジンマシンのもとが流れてくれるといいなぁ。
そうか、ナイフでぐっさりやろうか。
血が出れば、かゆみのもとはなくなるんだ。
いやいや、そんなことせずに、
かゆみのもとを取り入れるんだ。
そうすれば強くなれるよ。
頭の中の双子がわめいてる。
何が起きているんだ。
君は楽になりたいよね?
君は生きたいよね?
どちらを選ぶ?
僕は…
頭の中で、双子を一喝する声がした。
僕の意識はそこで途切れた。
なんだかんだで、僕は傷だらけになりながらも、
ジンマシンから生還した。
頭の中の双子は、
よくわからないけれど、
アレルギー物質が語りかけた気がする。
一喝したのは、たぶんお薬だろう。
そんなわけで僕は、
薬や病原体の声が聞こえるようになった。
医者には絶対ならないぞと心に決めている次第だ。
健康がいいよ、まったく。