怪談:おかし


お菓子大好き。
この世の中のすべてのお菓子を食べてみたいと思うの。
世界中のどのお菓子も、きっとおいしいものだから。
あたしはとりあえずお金があるから、
どんどんお菓子を取り寄せた。

最高のお菓子は距離を関係なく最高で。
食べている間、あたしは幸福に浸れた。
そう、お菓子は幸福になるためのものよね。

餓死する子供たちの代わりに、
あたしが幸せになってあげる。
どんどん食べて、
どんどん幸せになってあげる。
あたしは餓死する子供たちの顔なんて覚えていない。
言ってみたかっただけ。
遠い子供なんて、知らない。
あたしはここで、お菓子を食べて幸せになるだけ。

何もかもが素晴らしい。
人間の作るお菓子は、どうしてこうも素晴らしいのかしら。

この素晴らしさを知っているのはあたしだけ。
うん、素晴らしい。
全てのお菓子の味を知り尽くしているのは、あたしだけ。
お金があるっていいね。

ある日。
あたしは別の部屋に運ばれた。
お菓子をたくさん食べた人がいく、特別の部屋と言われた。
「それはどういうことをするの?」
「お菓子に満たされた、幸せな人が行くべき場所、それ以上は」
「いいわ、行きましょ」
あたしはその部屋に行った。

このお菓子を食べつくした舌を使って、
新商品の開発でもするのかしら。
それだったら、いつでも新しいお菓子が食べられるから、
とっても素敵だと思うの。

あたしは予想通り、きれいな厨房に案内された。
真っ白な厨房。
真っ白な料理人、かな。
それと、おじいさんが何人か。偉いのかしら。

一人おじいさんがすっと前に出て、あたしを見た。
「現代の桃娘は、どんな味がしますかな」
「ももむすめ?」
「お菓子で血肉が出来上がっている、食用の娘ですよ」

あたしの思考は停止した。


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