怪談:かお


大きな顔が。

いつ頃からだか忘れたが、
私の部屋の窓には、
大きな顔が張り付いている。

霊とか祟りとかなんとかかんとか。
そのあたりは全然調べていない。
ただ、大きな顔が毎日張り付いている。
表情はある。
こちらの失敗を喜ぶような顔をしている。
嫌な顔だ。

お祓いで祓われるようなものでもあるまい。
とりあえず放置。
消えるとも思えないけれど、
念仏がきくとも思えない。

この部屋に人を招いたことはない。
招いてはいけない気がするのだ。
その話を友人にしたのが間違いだった。
「俺霊感あるからさー」
などと自称する友人が、
私の部屋にやってくることとなった。

友人は私の部屋に入るなり、
念仏やら何やらの、オンパレードを始めた。
そうか、そんなに大変なのがいるのか。
気にしていなかったが、この顔はだいぶ悪い物なんだろうなぁ。
などとぼんやり考えていると、
お祓いらしいものをしていた友人の顔色がどんどん悪くなってきた。
「どうした?」
「これ、無理かもしれない…」
「無理?」
「この部屋自体が…」
友人はそこで、倒れこみ、
友人は、部屋に吸い込まれるように消えた。

振り返ると、あの大きな顔がにやにや笑っている。
失敗したってことらしい。

数日後。
この部屋の壁に友人の顔が増えた。
なるほどやばかったのは部屋の方か。
しかし、顔が増えられるのも困るし、
話をしたら誰かが祓おうとするだろうし。
困ったね、友人作れなくなりそうだね。

不思議なのは、友人を覚えている人がいなくなってしまったこと。
この部屋って案外、どこかとつながってるのかも。

大きな顔がにやにや笑っている。
戦う気はないんだけど、
この顔をどうしたらいい物かなぁ。


次へ

前へ

インデックスへ戻る