怪談:変身するジョーク
道化から英雄へ。
英雄から道化へ。
ジョークはそこで最大の力を発揮する。
笑わせる。
人の笑いは独裁者を引きずり下ろすことだってできる。
人の中に流れるジョークを、
水を堰き止めるように止めることはできない。
人はいくつも、力を持って生まれてくる。
音楽を作る、
走ることができる、
料理が作れる、
重いものが持てる。
生きていくうちに、平均になったり特化したり。
そうして人はありきたりのものになっていこうとする。
そこに一石を投じるのが、
ジョークを考えて、言える勇気。
そのジョークに人は笑い、
言える勇気に、人は、おどけた英雄を思う。
ジョークは変身する。
女が男に。
幼児が老人に。
なんにでもなれるジョーク。
神にも悪魔にも。
支配者にも奴隷にも。
ジョークの前に法はない。
ジョークは真実でなくてもいい。
真実を突きつけるもの。
この世の中の真実はかくあるべし。
そんなものを笑って飛び越えていくジョーク。
真実が悪なわけでなく、
ジョークには多分姿がないのだ。
なんにでも変身できる、
妖怪のようなそれ。
真実の姿などなく、
何かに変身して笑っている。
英雄でも道化でも、
すべてであり何もないもの。
真実を突き詰めることに疲れたら、
ジョークの一つでも友人としてもいいかもしれない。
笑えればいいし、
つまらなくてもいい。
世界は一つではない。
均一に一つではなく、
人の数だけ視点はあるし、
生きているものの数はそれより何倍も。
そして、生きているとも何とも言えないものは、
それよりもっとあるに違いない。
すべて生き物の真実で作られているわけでなく。
生きているとも何とも言えないジョークのような存在。
嘘のようなそれで、世界は何倍にも広がる。
あなたの世界はどこまでも広がる。
英雄にも道化にも。
ジョークひとつで何にでも変身できる。
そう。なんにでもなれる。