怪談:トリッキーなラブレター


幼馴染のあいつは、高校に入って、
憧れの女性ができたらしい。
俺は運動バカの節があるし、
あいつはミステリー小説を読むのが好きで、
接点はあまりない。
でも、ばかばかしい話を、お互いするのが好きで、
腐れ縁なりに付き合いをしている。

話を戻すと、
あいつは好きな人ができて、
彼女にラブレターを送りたいらしい。
俺はサッカーが恋人だけど、
恋に落ちたあいつが言うに、
サッカーも作家も似ているんだから、
ラブレターの案を考えてくれ、らしい。
無茶いうなよなー。

休日、あいつの家にお邪魔して、
ラブレターの案を練る。
俺はまっすぐ、好きですというのでも、
いいんじゃないかと言うが、
あいつは、何か記憶に残る、
少しトリッキーなのがいいと言う。
運動バカの俺にそれを求めないでほしいなぁ。

思えば。
こいつと付き合って腐れ縁は一体何年だろう。
長いような短いような。
若いころの時間は長く感じるし、
年をとったら時間はすごく早く感じるそうな。
そして、過去を思い返すと、
キラキラしたものが遠くに感じるそうだ。
こいつの恋はそんなキラキラなんだろうか。
俺たちは、そんなキラキラの真っただ中にいるんだろうか。

俺は、提案を一つ。
自分のことを、うざくない程度に入れてみたらどうだ?
ラブレターをもらって、
お話してもいいかなと思うのは、
相当ハードルが高いと思う。
少しだけ、お話したいなと思わせることを自己紹介。
どうだろうかと俺は提案。
あいつは大きくうなずいて、
ラブレターにとりかかった。

数日して、
幼馴染のあいつは、頬に紅葉の印を作った。
一体何を書いたのかと聞いたら、
「俺たち数百年生きてるじゃないか。それを書いたら…」
俺は大きくため息。
「ふつう、馬鹿にされてると思うだろ、それ」
「変わった人なら付き合ってもらえるかなと思って…」
「普通の高校生にそんなの求めるんじゃない」
「そっかぁ…そうだよなぁ…」

俺たちの腐れ縁も数百年。
あいつが恋に落ちて振られるのも何百回。
高校生になって、卒業せず中退するのも何回も。
人じゃないことをそろそろ自覚したいけど、
あいつは恋をして、その度振られてる。

俺は何百年も生きています。
そのトリッキーなラブレターに感動する高校生は、
今のところいないらしい。


次へ

前へ

インデックスへ戻る