ピンポン球の場合


叩かれたら跳ね返れ。
それが俺たちの魂ってやつだろ。

とにかく、球と言うものは落ち着きがない。
俺もそうだけどさ。
まぁ、そういう風なものになりたかったんだ。
だから、とても満足しているよ。

転がって、あるべきところに落ち着く。
球体はそれをするのに特化していて、いい感じだと思う。
叩かれ蹴られ打たれ。
何しても球はへこたれない。
そういう球状の魂って、俺たちにあると思うんだ。

魂は何も、熱く強くって訳じゃないさ。
へこたれないのは、いちばん強い形をしているから。
俺、ピンポン球にだってあるのさ。
何事にも形があるけれど、
一番いい形を体にしているってのは、
それだけで妄人になってよかったと思うよ。

あっちにこっちに、
俺たち跳ね返されてそれはそれで大変さ。
でも、痛みとかそういうものよりも、
俺たちは絶対どこかへたどりつける。
そこに転がっていける。
そういう思いのほうが強いんだ。

叩かれたら跳ね返って。
落ち着きなく転がって。
動き回っているように見える俺たちは、
いちばん安定しているんだと思う。
あんたら、自分が動いていないと思うのかな。
あんたらも、単純な形になれば、
きっと、俺たちとそう変わらないと思う。

まぁるくいきようよ。
平和ボケをしようってわけじゃないよ。
ただ、角が取れてまぁるくなった球は、
結構強い形なんだって、俺は言いたいんだ。
そして、わりと生きやすいもんだよ。

あんたも、妄人になってみたらどうかな。
結構楽しいものだよ。
妄想をきちんとしていれば多分死ぬことすらないはずさ。
死んでも物になるだけ。
でも、なりたかった姿になって死ねるんだから、
妄人もいいものだよ。
人に飽きたら妄想してみるといいさ。
きっと、俺たちと似た世界が見えてくるはずさ。

俺は人、俺は物。
俺は妄人。
妄想の果てに物になりかかっている、妄人。
俺はピンポン球の妄人。

なりたい物になって生きることを妄想を謳歌している。
妄人がクーロンを行く。


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