バスタオルの場合
つつんであげたいの。
何よりも優しく。
私はいつも乾いているの。
あなたの水をいただくため。
あなたを包むため。
私は乾いてなければいけないの。
私はあなたの水をいただいて、
少し潤って、あなたを乾かす。
乾いたあなたは水が滴っていたことも忘れるのかも。
それはそれでいいの。
私は少しだけ、あなたを包めればいいの。
そして、私はまた乾いて、
あなたの水をいただくため、また、待つの。
あなたは水浸しになることだってある。
私はあなたの水がとても好きなのかもしれない。
水をいただいて、あなたを乾かしては、
私自身からあなたの水が乾いていくのが、
わかっていても切なくなるときがあるの。
水浸しのあなたを包んで、
その水を乾かしてあげたい。
全部は無理かもしれないけれど、
あなたの水を、私にください。
あなたの水。
あなたを美しく見せる水。
それを私がいただくことは、いいのか悪いのか。
今ではよくわからなくなりました。
あなたを包んで、水をいただいて。
そう思っていたら、
私はバスタオルの妄人になっていました。
あなたの水を受け止められることが、
私の幸せで、
それが洗われるたびに何度でも感じられることが、
私のこの上もない幸せです。
あなたの水。
それは涙なのでしょうか。
それとも、単にシャワーを浴びただけなのでしょうか。
それとも、外が雨だったのでしようか。
何でもかまいません。
あなたの水を乾かして、あなたを少しだけ包む。
それだけ。
私はそのために生きています。
私がずぶぬれになるほど、
あなたの涙が流れないように。
そんな日が来ないように。
私は祈っています。
バスタオルの祈りが聞き届けられるかはわからないですけど、
あなたの水は、私の糧であるけれど、
あなたの水でおぼれても、いけないと思うのです。
私は人、私は物。
私は妄人。
妄想の果てに物になりかかっている、妄人。
私はバスタオルの妄人。