命の味


囲炉裏の周り、
古い時代の朝ごはん。
米や味噌。
その原料は当然植物。
昔は、農家は畑を耕したり、
農作物を作って収穫したり、
そういう人たちを農家と呼んでいた。
今は農家といえば、
命知らずの植物戦闘集団だ。
こうして植物が暴走して狂暴になった時代、
花毒の毒性よりも、
植物を狩って手に入れる、
農作物を売って手に入れる報酬のほうが、
魅力的だという。
この時代になっても、
人は食事をし、何かを食べて命をつないでいる。
すべてを人工栄養にはできていない。
肉は、畜産農家が生産しているが、
花毒の強い植物が近くにあると、
家畜が花毒で植物化もする。
植物化した家畜はどうしようもない。
この時代の人々は、
生きるために植物と戦っている。

アキは米を口にして、
命の味を感じる。
どこからの流通ルートかは知らないけれど、
安価な合成人工米より、
ずっと命の味がする。
それは、おいしいということなのだろう。

オギンは、野菜らしいものを食べている。
ベジタリアンの吸血鬼は、
この時代ならではの異形なのかもしれないし、
ヤシチはふわふわ浮きながら、みんなのことを見ている。
特に何か食べる様子はない。
トビザルも食べる様子はない。
外見からしてごつくメカっぽいが、
ロボットかサイボーグか、
そのあたりはまだ聞いていない。
ミトはおいしそうに猫まんまを食べる。
ハチにもご飯が与えられていて、
ハチもまた、おとなしくご飯を食べている。
ソウシもモクモクと米を食べる。
頬にはビンタの跡がかすかに残っている。

アキはこういう食事を、
大事なものだと感じた。
人工栄養でなく、
合成人工米でなく、
生き物としてあるべき食事だと思った。
だから食べ終わったアキは言う。
「ごちそうさまでした。おいしかったです」


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