未来


クーロンの奇跡。
それは、ありえないことがおきたといわれている。

それをきっかけに、
白黒の敵が工作をした。
ラブパンダがクーロン襲撃をたくらんだと。

人々のアンチパンダの熱は加速していった。
パンダを滅ぼすべきだという声が、
日に日に高くなっていった。
政府も声を抑えきれなくなった。
そして政府は方針を転換した。
パンダを、ひとつがいだけ残し、
あとはすべて滅ぼすべしと。
もう、パンダは人の隣人でも、
客寄せでもなく、
無害な島を襲う、害獣になったと。
政府も認めざるを得なかった。

ラブパンダの反発は激しかった。
パンダは守るべきであると、
パンダは隣人であり、神であると。
その声にこたえるものは、もう、政府にはいなかった。
ラブパンダが後ろ盾を失った瞬間であった。

パンダは虐殺された。
政府の浄化政策とうたわれた、虐殺だ。
世界から急激にパンダは減っていき、
やがて、何百年も前の水準に戻っていった。
パンダは絶滅危惧種になった。

そして、残されたひとつがいのパンダは、
宇宙船に乗せられることとなった。
宇宙船は衛星軌道に乗る。
この中で、パンダは千年眠り、
千年後、もう一度地上に降り立つ。
それは、ひとつがいのパンダにかけた、最後の情けだった。

宇宙船は発射される。
希望をのせて。

ひとつがいのパンダは眠っている。
笹を食べたり、タイヤに乗ったりする、
原始的な夢を見ている。
何百年も前の平和なパンダ。
人が教えたわけでもないのに、
本能でパンダは平和の道を歩もうとしている。
未来のパンダ。
過去のパンダ。
彼らの夢の中でゆっくりひとつになっていく。

パンダの隣には、
いつも、人がいた。
千年後の未来にも、
こんな人たちがいればいいなと、
パンダが思ったかどうか。

この世界の夢を見ている。
パンダは、この世界の夢を見ている。
打ち上げられた宇宙船は衛星軌道に乗る。
まだ、夢は始まったばかりで、
パンダは平和に眠っているばかり。

千年後。
人は何をしているだろうか。
存在しているだろうか。
パンダを受け入れることができるだろうか。
今度こそ、隣人としてともに歩めるだろうか。

未来。
それはとても曖昧で、
何一つ見えてこないもの。
白黒つけられないもの。
いまだこないもの。
それでもいつか来るもの。

「パンダちゃんだ、かわいい!」
夢の中で遠い声がする。

眠るパンダは静かに微笑んだ。


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