噂のチャイナ服


サンザイングリーンのアズは、
最近手に入れた、豚の着ぐるみをまとって、
ある通りを目指していた。
アズを見て、いろいろな人が驚いたりしているが、
アズは気にしない。
話題になるならそれでいいし、
何はともあれネタなのだ。
一発、驚いたり笑ったり、
人々に、そういう余裕が、
ちょっとできればそれでいいのだ。
アズの散財はそこにある。
自分が気持ちよくなり、
他人に余裕を。
サンザインの理念の一つであり、
また、アズが目指しているところでもある。

ネタ物には目のないアズが、
ネタでなくても「いける!」と感じたもの。
そのひとつが、これから目指す、
リカのお店のチャイナ服だ。
とにかく魔法にでもかけられたかのように、
着る人に似合ってしまうというチャイナ服だ。
アズは、緑のチャイナ服を着た瞬間、
「これはいける!」
と、感じた。
そして、値札の確認もせずに、買った。
後悔はしていないし、
するような値段でもなかった。
良心的で、仕事ができていて、
なおかつ似合うのだ。
散財しない理由がないと、アズは思った。

アズは、通りの角にある、リカのお店を覗き込んだ。
リカは、作業の最中らしい。
デザインでも考えているのだろうか。
「ぶぅぶぅ」
アズは鳴いてみる。
できるだけ、おかしく。
リカは顔を上げ、
続いて、笑っていいのやら驚いていいのやらという顔になる。
アズは満足した。

「どう、リカさん、繁盛してる?」
アズは豚のまま店に上がる。
「おかげさまで。今日は豚さんですか?」
「ぶぅ」
アズは再び鳴く。
リカはくすくす笑う。
「豚さんにも似合うチャイナというのもいいですね」
「できるの?」
アズは挑むように言ってみる。
リカは真っ向から受け止めて、
「ひとつ、やってみる価値はあります」
「だって、豚さんよ?」
「チャイナ服の豚さんも、ネタになるのではないですか?」
「上等」
アズは思い描く。
豚とチャイナ服。
歩き回ったら最高だ。
最高に、ネタだ。

「それで、予約しておくことはできるかしら?」
ゼニーの力が動くことを感じる。
きっと出来上がったチャイナ服は、
みんなをびっくりさせるほどになるだろう。


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