子供達の夢


サンザインピンクことルルと、
サンザインホワイトのワガは、
町を歩いていた。
とりあえずできることは、
悪の帝王シッソケンヤークが操っている、
悪い質素倹約から人々の目を覚ますことだと、
ムダヅカインは説く。
変身がどこまで役に立つかは未知数。
でも、サンザインのゼニーの力で、
きっと世界は変わるはずと。
ムダヅカインは信じているようであったし、
彼等サンザインたちも、可能性は感じていた。

(何ができるかしらね)
と、ルルは考える。
派手に何かしでかしたら面白いだろうなとは思う。
「あ、あれは」
ワガが何かを見つける。
ルルはそちらを見る。
「マジカル・マイのステッキですね。今日発売だったんだ」
「マジカル・マイ?」
「ルルさんは知らないかな。テレビの魔女っこお姉さん」
「つまりヒロインみたいなの?」
「英雄的ヒロインって感じですね」
「ふぅん…」
答えながら、ルルは歩き、
マジカル・マイのステッキが売られている、そこにやってくる。
子供達が、ものほしそうにじっとステッキを見ている。
「ほしいの?」
ルルはなんとなくたずねる。
「うん、でも」
「でも?」
「節約のためだから、買うのはいけないんだって」
「節約なの?」
ルルは問い返してしまう。
子供達は堰を切ったようにわぁわぁ言い出す。

「どうせ新しいものがどんどん出るんだからって」
「大人にはお金をためる義務があるんだって」
「節約はあなたのためだって」
「魔法なんて存在しないんだって」

子供達は目に涙を浮かべながら、
必死に訴える。
これは、悪い質素倹約だ。
ルルは直感でそう思った。
夢を踏みにじってまで、節約する意味があるだろうか。
いや、ない。

ルルは、一歩踏み出し、そして、高らかに言う。
「ステッキをこの子供達に!お金は私が払うわ!」

けがれなきゼニーの力が流れる。
ステッキに夢を少しだけ実現する力が宿る。
不思議そうな顔をしている子供達に、
ルルはステッキを配る。
「お姉さんも変身できるけど、それはまた今度、ね」
光を宿したステッキが、
笑顔の子供達に渡っていった。

子供達の夢は、壊してはいけないと。
サンザインはそうあれと思った。


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