召喚の代価
「金にならない仕事なら請けないよ」
銀髪の少年は、言い放つ。
褐色の肌をしている。
「働き次第ではいかようにもなるよ」
相手は悠然と答える。
答える側も少年だ。
名前をヨーマという。
「ヨーマ君と言ったね。何を知っているんだい?」
「デジタルデビル…というところまで」
「へぇ、面白い単語から攻めてくるね」
「ハルミ君、君の働き次第では、金はいくらでも」
「デジタルデビルを知っていて声をかけてきたんだ」
ハルミはくすっと笑う。
「デジタルの召喚師として、腕が鳴るね」
ハルミの背に、幾匹もの獣が見えた気がする。
ヨーマは微笑んだ。
ハルミは表向き、少年らしく過ごしている。
しかし裏では、悪魔召喚プログラムというものを用いて、
コンピューターで悪魔を召喚する実験をしている。
家族の誰も知らない、
ハルミだけの仕事だ。
いつものようにハルミは部屋に戻ってくると、
パソコンを立ち上げる。
「出てきていいよ」
部屋に呼びかけると、
雪の妖精のころころしたのが、
「ひーほー」
と、いいながら出てくる。
「お待たせ、暑くなかったかい?」
「ハルミが来るのを待ってたほ。暑くなんかないほ」
ハルミはこの妖精を飼っている。
悪魔召喚でたまたま呼び出した、
小さな妖精だ。
ハルミはこの妖精を養うため、
ハルミ自身の生活費を切り詰めている。
ヨーマと名乗った少年はそれに気がついているのか。
「君は僕が守るから」
ハルミはつぶやく。
どれだけ節約してでも、
この小さな妖精を守るから。
「ハルミは、僕がまもるほ!」
妖精はうれしそうに笑う。
「悪魔の食べ物買ってきたよ。今食べる?」
「うん、お腹ぺこぺこだほ」
ハルミは微笑む。
この妖精が笑ってくれるなら、
シッソケンヤークに金を借りてもかまわない。
「しばらく戻って来れないかもしれない」
「ハルミのお仕事ほ?」
「うん、でも、戻ってこれたら…」
「ハルミは大丈夫ほ」
妖精は微笑む。
節約のつらさなど、雪のように解けてしまう笑顔だった。