飲み込まれる


グリフォンは、シッソケンヤークの広間にいた。
「および、でしょうか」
「うむ」
シッソケンヤークは重々しくうなずいた、ようだ。
「サンザイン達は、そのあとどうだ」
「こちら側の洗脳した魔人を、確実に倒しています」
「そうか」
「助けるものも日に増えています」
「そうか」
「サンザインは…」
いいかけ、グリフォンは黙る。
秘書から聞いているのではないか?
ヨーマという、あの少年から。
「シッソケンヤーク様」
「なんだ?」
「あの、他の者は…」
「グリフォン」
「はっ」
「お前がシッソケンヤークになる気はないか」
「…どういう、ことですか」
「私はお前を飲み込もうと思っている」
「そ、それは」
グリフォンは驚愕した。
飲み込むということが、どういうことかわからないが、
危険とグリフォンは思った。
「私自身の力を増やさなければいけない事情がある」
「そ、それは一体」
「グリフォン、それは私の意識で聞くといい」
グリフォンは覚悟が決まらない。

これまでグリフォンは、
サンザイン相手に、散々負けている。
邪魔が入るし、サンザインに助っ人は来るし、
シッソケンヤークが、飲み込むなどと言い出すのも、
戦力としてグリフォンを数えないとしていることに他ならないと、
グリフォンは思う。

「グリフォンよ」
「はっ」
「もしお前の力が強ければ、お前の意識は残るだろう」
「…」
グリフォンは黙ってしまう。
「覚悟が決まらないのはいいことだ」
シッソケンヤークが微笑んだ気配がする。
「俺は、怖いです」
「怖いか」
「怖いです」
「何が怖いのだ?」
「それは…」
グリフォンは言葉にできない。
「もっと恐ろしいものがあるとしたら?」
「もっと?」
「時間が、ないのだ」
シッソケンヤークの声に、
グリフォンは苦悩を見つけた。
それは、ヨーマなどには見せないものだと、
グリフォンは思った。

「…のみ、こんでください」
グリフォンは搾り出すように、言う。
「俺は、シッソケンヤーク様の中で、生きつづけます」
もっと恐ろしいものがあるとするならば。
そのための犠牲ならばと。
闇が広がる気配。
グリフォンの意識は、闇に掻き消えた。


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