すべてが終わったら
ガタリの復活後。
世界は一見して、普通に機能している。
サンザインを攻撃するようなこともなく、
過剰に悪がはびこることもなく。
ガタリは不気味に沈黙している。
ヘキとムギの結婚式は、
すべてが終わってからとなったらしい。
郵便屋はそのメッセージを届ける。
郵便屋は記憶がない。
ただ、郵便屋はこれだけ覚えている。
ムダヅカイをすることがとても好きだと。
その言葉を聞くと、何かを思い出せそうな気がする。
でも、郵便屋は思い出せない。
「消費の賢者、ショウ・ヒー・チャン」
郵便屋に声がかけられる。
「ムダヅカイン・チャンのほうが思い出せるか?」
老人の声がする。
声の方向がいまいちわからない。
「三賢者がまた集うことがありそうだ」
郵便屋が答えないのをいいことに、
老人の声が続ける。
「セイ・サーン・チンも重い腰を上げるだろう」
郵便屋の頭の中で、何かが瞬いている。
「わしはリュー・ツー・イモ。思い出せなくても、そのうち関わる」
郵便屋は何かを言おうとする。
それより先に、イモという老人が語る。
「この世界を、金を回せ。それがわれら賢者の役目だ」
突風が吹き、
イモ老人の気配は消える。
あとにたたずむ郵便屋。
郵便屋は思い直す。
とにかく、この郵便を届けなくてはいけない。
今、記憶のない郵便屋ができることだし、
それがまず、世界を回すことだと信じて。
老人が疑惑の種をまいていると、
嘘をついた人形。
疑惑は疑惑を呼び、
サンザインを傷つけた。
でも、郵便屋は知っている。
サンダーという老人が、
希望の種であるコインを、
ムダヅカインに代わって渡していたこと。
そして…なぜか郵便屋は知っている。
「まだ、サンザイン・ブルーが覚醒していない…」
まだ見ぬ青。
それはこの空のように青いのだろうか。
海のように青いのだろうか。
悪がどこかに潜んでいる中、
希望の種も、ちゃんとある。
すべてが終わったとき、
郵便屋はどうしているだろうか。
世界に平和は訪れてくれるだろうか。
(サンザインは負けない)
郵便屋は思う。
(だって、正義の味方じゃないか)
郵便屋は次の配達に行く。
サンザインのファンレターを届けに。
大きな箱いっぱいの、応援を届けに。
「郵便です」