それから


店先で、語り手は子供相手に話をしていた。
この町で生まれたサンザインをはじめとするヒーローの話。
子供達は目をきらきらさせて、その話に聞き入り、
次を次をとせがむのだ。

物語は終わる。
子供達の安心したため息と一緒に。
語り手はそれで満足する。
この物語が本当であっても嘘であっても、
一緒に期待したり、どきどきしたり、
そういう時間を共有できるということ。
それがなによりもの財産であると思う。

語り手の後ろから、声がかかる。
「店長、物動かすの手伝ってー」
語り手の、パンダ店長は、
「いやはや」
と、つぶやいて子供達のところから離れる。
「またおいでみんな、もっと面白い話をしよう」
子供達は店先から駆け出し、
サンザインごっこを誰がするかで言い合いしながら広場へと行く。

「いやはや」
パンダ店長は再びつぶやく。
子供に金の大切さを説くわけではないけれど、
ただ、一人で生きているのではないと。
誰もが縁でつながって生きている。
困ったときも突破口があるはず、
そして、誰もが内側にそういう突破口を開く力があるはずと。
「誰もがヒーローになれるんだよ」
パンダ店長はつぶやく。

「店長、いる?」
パンダ店長に声をかける、ネジ頭の人影一人。
「やあ、ネジさん」
彼らのとりとめのないお話、
クーロンの日常。

物語は終わる。
終わりの向こうは、パンダ店長もわからない。
ただ、底抜けに優しいこの町が好きで、
永遠でなくても、有限であるからこそ、
この町の奇跡のひとつを伝えていきたいなと思った。

みんながヒーロー。
たまにはそういうことがあったっていいじゃないか。

人の縁は財産。
散財しようがない、宝物。
みんなの心をつないだこの戦いが、
クーロンを通して絆に変わるといいなと思う。
薄い縁かもしれない。
でも、これが思い出に変わっても、
心のどこかで彼らが力を貸してくれる。
励ましてくれる。
いいことがあったら、喜んでくれる。

サンザインの物語はこれでおしまい。
彼らは完璧でないヒーローだけども、
あなたの心で一緒に戦ってくれる仲間だ。
誰かのために散財をするのならば、
あなたの心にも立派にサンザイン魂が根付いている。

それからのこと。
強い絆で結ばれた、この町の住人は、
どんな悪にも、決して負けることがなかったという。

正義はここにある。
信じたここに。

おしまい


前へ

インデックスへ戻る