来訪者


あの戦いからしばらくが過ぎた。
平和になったクーロンに、いつものように住人が集まったり、
または、集まらなかったり。
どこかに飛び出していっているものもいる。
いつもの場所で語り合っているものもいる。
そのくらいでちょうどいい。
平和を満喫するのに、受身姿勢じゃ物足りない。

三賢者はクーロンに残り、
龍脈の再構築につとめている。
金の流れをもう一度根付かせること。
それはかなりの難題ではある。
けれど、奇跡が何度でも起きるようなクーロンならば、
あるいはもう一度、龍脈も起きるかもしれない。

サンザインだった彼ら、
ともに戦った彼ら。
悪役を演じた彼ら。
彼らのその後は、クーロンに来て見るといい。
噂が届くかもしれない。
あるいは、彼らの誰かに出会えるかもしれない。

サンダーマスターは、いつものようにバーにいた。
ヘキとムギが盛大な結婚式を挙げたのは少し前だったか。
カリスマも年貢の納め時があるものだと、サンダーはからかった。
反論するヘキの表情は、うれしさで満ち満ちていた。
このくらいでちょうどいい。
ああ、平和なんだと思う。

バーの扉が開かれ、一人、見慣れないお客が入ってくる。
「いらっしゃい」
サンダーマスターはいつものように愛想よく声をかける。
お客は外見は男の姿をとっている。
内面はどうかはわからない。
この町に溶け込んでいるようでもあり、
今しがたこの町にやってきたようでもある。
その人はルキと名乗り、こう言う。
「旅に出たあの人を知りませんか?痕跡をたどっているんです」
旅に出たあの人。
サンダーはよく知っている。
「いずれ会うこともあるでしょう」
「そうでしょうか?」
「いつになるかはわかりません、けれど、その人のことですから…」
サンダーは言葉を区切ると、
「きっと、ずっと先で待っているんじゃないかなと思うのですよ」

ルキはサンダーの出してくれた酒を飲む。
思い出を凝縮したような、何か懐かしい味がした。

小さなバーに、ぽつぽつとお客がやってくる。
来訪者を受け入れ、歓迎し、
おせっかいを焼きたがるクーロンの住民。
それがクーロンの日常であり、
また、平和になったということなのだ。

金銭のやり取りは信頼があり、
信頼の人のつながりは、大きな力になる。
ゼニーの力。
信頼の力。
誰かとつながっているエンの力。
今日もまた、誰かとの縁が作られる。
それは、いざというとき、とても頼もしい力となる。

みんな、信頼の上に立っている。
みんな、この空の下にいる。
みんな、ここにいる。


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