黎明のクーロンから
広い広いこの世界で、
ひとつの町を探し求めて歩く旅人がいる。
それはよく描かれるような楽園でなく、
旅人にとっては、ある意味の楽園で、
そこは、歪みと汚れに満ちた、あのときの、あの場所であるという。
陰界のあの場所。
あの時、プレイステーションのゲームの中で、
1997年5月22日。
みんな確かに風水師であり、
たどり着く場所に陰界の九龍城を導けた。
その世界をまた、感じることができる。
広い広いこの世界のどこか、
解体されたあの場所が、陰界に帰ったあの場所が、
また形になって現れるという。
今、大門は開かれ、
ネオンが大通りを照らす。
たどり着いた旅人の何人かは、
「ここは違う」
という。
また何人かは、
「こういうものじゃないか」
という。
そして、少数が、
「来た。ここだ」
という。
黎明のクーロンは、多分そうして始まった。
歩きにくい町並みと、迷子をたくさん作りながら、
路地は増えたり減ったり、曲がったり整えられたりする。
それは生まれたばかりの町のうごめきかもしれない。
それは、多分、生きている。
この町は生きている。
いろいろなものが今まさに生まれる町。
廃墟然とした、忘れられたような世界の端っこで、
生まれたばかりのクーロンは、呼吸をするように旅人を受け入れる。
旅人はこの町に魅入られ、
住民となる。
よどんだ空気を感じながら彼らは思う。ここが感じたかったクーロンであると。
ずっと憧れを抱いていた、
汚れと歪みに満ちた世界であると。
帰る場所がクーロンであると。
そしてなにより、このクーロンにはこれからがある。
ここが旅人の終わりであり、ここが住民の始まりである。
空気はできている、さぁ、ここに何を作る。
住民に、課せられた大きな使命。
それは、この町をどう育てていくか。
この楽園を生かすも殺すも自分達次第。
さぁ、ここに何を作る。
生まれたばかりのクーロンは問いかける。
何がしたい、どうしたい、何になりたい。
クーロンの問いかけに、住民は答えていく。
静かに物を作ることで。そして、時に祭りと称して大騒ぎをして、
こうありたいという、力の方向を示そうとする。
それは正しいのか、間違っているのか、
まだ誰もわからない、そんな黎明のクーロンのころのお話。