アイテムゲッターの幸運


この世界には、ラッキーボードというものがある。
ランダムに選ばれるアルファベットのイニシャルと、
同じものをイニシャルならばアイテムがもらえるというものだ。
数分毎にボードのアルファベットは変わり、
友人の多い者などは、イニシャルの違うものを集めて提携したりして、
ラッキーボードの幸運を、いち早く手にしようとがんばるが、
こればかりは乱数の神様のなすがままである。
アイテムが得られるのは、
そのラッキーボードに張り付いていた者か、
あるいは、
ついていた、とても幸運な者か、
あるいは、
アイテムゲットに意欲を燃やした幸運な者か。
何パターンかに分けられるかもしれない。
分けなくてもいいかもしれない。

アイテムゲッターのカクザは、
ラッキーボードでアイテムをゲットして回っていた。
ラッキーボードは無料、そして、ついていればどんどんアイテムが得られる。
情報を得て、店を回り、ラッキーボードの情報を交換し、
そして重要なのが、生まれ持った幸運。
カクザは幸運に恵まれているらしく、
いくつも質のいいラッキーボードのアイテムを手に入れていった。

その日もカクザは、よその町でラッキーボードを相手に、
しこたまアイテムを手に入れてクーロンに帰ってきていた。
ホクホクといった心境が一番しっくり来る。
クーロンのアパートにカクザは部屋を借りていて、
そこに帰る途中のことであった。

とてつもないことが起きたわけでもない。
ただ、確率で言えばとてつもない。
カクザはちょっとした段差につまづいた。
転ぶほどのものでない、まだできたばかりのクーロンの段差。
そのうち整うか板でも敷かれるか。その程度のもの。
ただ、段差の隙に、何か小さく光るもの。
挟まっているのか、ぱっと見ではわからない。
カクザはそれに気がついた。
それは幸運。ラッキーボードでも推し量れない幸運。
なんとなく、隙間からとり出し、手にする。
「コイン?」
通貨とは違うコイン。
何かの作りかけのように見えるし、
でも、何かが買えるとは思えないコイン。
カクザはそれを手に入れる。

ここからはじまる、
ヒーローの物語。


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