とじこめたい
マルは、噂を届けにガラクタの植物園にやってきていた。
電気街中心はネココという少女の身柄を確保して、
その身柄を国に引き渡すという。
それで天狼星の町は平和に戻るはずだという噂。
そんな噂をマルはガラクタに届ける。
ガラクタはいつものように植物の世話をしながら、
マルから話を少しずつ引き出す。
マルはそれがうれしい。
ガラクタとの時間を、いろんなことをしてすごしたいとマルは願う。
植物の写真を撮って欲しければ、何枚だって惜しみなく。
くだらない話でも、して欲しかったらいくらでも。
黙っていて欲しいのならそうだってする。
マルはガラクタの望みをかなえたいと思う。
魔法にかけられたのだろうかと、マルはなんとなく思う。
ただ、ガラクタしか見えない感じ。
「マル」
ガラクタが呼ぶ。
「君は、俺が国に引き渡されたら、町が平和になるといったら?」
ガラクタがあまりにも自然に言うものだから、
マルは一瞬何のことかわからなくて、
気がついて思いっきり否定する。
「ガラクタさんを渡すものですか!なにがあっても!」
勢いでそんなことを言ったあと、沈黙。
マルは恐る恐るガラクタのほうを見る。
ガラクタは、びっくりしていた。
「……驚いた。マルもそんな調子でしゃべるんだね」
「え、あの……」
マルは赤面する。
「でも、うん、本当に大事なら閉じ込めるくらいしたいものかな」
ガラクタは独り言のようにつぶやく。
「俺は取り返しに行くほど力がないから、大事なものは閉じ込めるな」
「何を、閉じ込めるのですか?」
マルはたずねる。
「今はよくわからないんだ」
ガラクタはあっさりと答える。
マルは、なぜかその答えに安心と残念を覚える。
ガラクタさん、と、マルは言おうとしてできない。
マルが国に引き渡されることがないように、
閉じ込めてくれたらマルはうれしいですと、
言おうとしてできない。
ガラクタは植物を見るような目で、
マルを見て、ちょっと微笑む。
魔法にかけられたように、マルの目はガラクタに釘付けになる。
あなたに閉じ込められたいと、願いながら。