01
破落戸
斜陽街一番街、
ヤジキタ宅急便屋が営業している。
きつい目をした女性のヤジマと、
どこか間が抜けているけど、温和な男のキタザワで、
いろんなものを運んでいる。
その日ヤジマは珍しく一人で店番をしていた。
いつもなら二人で荷物を運ぶが、
今日はキタザワが一人で、重い荷物を持っていってしまった。
ヤジマとしては面白くない。
ほっとけばキタザワが、何もかもできてしまうのではないか。
そもそも、斜陽街に来る前だって…
ここに来る前は、
ヤジマはならず者というやつだった。
キタザワはそんなヤジマを心配しつつ、
ヤジマのちょっとだけ後ろを、
いつもいつも、犬のように追ってきていた。
宝石強盗は、その延長にあった。
あのとき…斜陽街に迷い込まなかったら。
ついてきていたキタザワまで巻き込んでつかまるところだった。
キタザワには、健全な未来が似合う。
ヤジマはそう思う。
ヤジマは気配に気がつき、
護身用の銃を、すっと取り出す。
「誰だ?」
ヤジマは一言、物陰に向かって言う。
「おっかないねぇ、しまっておくれよ」
「そうそう」
二人組らしい声が物陰から。
ヤジマは黙って静かに殺気を放つ。
「おっかないおっかない、美人が台無しだよ」
「そうそう」
ヤジマは引き金を引こうとした。
威嚇射撃のつもりで。
「出るよ、出ればいいんだろう」
「そうそう、男がいないのを見計らってやってきたんだ」
斜陽街の暗い物陰から、
ひょろりとしたのっぽの男と、デブで小さい男が顔を出す。
「お噂はかねがね、ヤジマさん」
「そうそう、かねがね」
「まずは物騒なもの置いてください。頼みます」
「そうそう」
ヤジマは一応銃を下ろすだけはする。
そのきつい目は、じっと二人組みを見据えている。
のっぽがうなずいた。
「俺達はハイ&ロウ。ギャングです」
「そうそう、俺たちヤジマさんの力を借りたくて」
「きっとヤジマさんの気に入る仕事だと思うんですよ」
のっぽが笑った。
ヤジマは思う。
これは一人ですべき仕事だと。
ならず者ヤジマの仕事らしい。