05
夢裁
これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
どこかの扉の向こうの世界の物語。
夢を裁く法律のできた国がある。
度重なる悪夢の増加に、
国が本腰を上げた形だ。
違法な夢は裁かれる。
夢が夢として正常であるために、
悪夢や、不健全な夢は取り締まる。
そうして、夢でない現実も、
健全な精神であるようにと。
そういった法律ができた。
国民からの反発は、思ったより少なかった。
この国の住民は、それほど、悪夢に参っていた。
自分の中にこんな部分があるのだと、
突きつけられるのに参っていた。
意識も無意識も自分なら、
このひどい夢を見ているのも自分、
どうにか心が健全になれないものか。
そうしてこの国の住民は、
夢をきちんと裁く法律に賛成した。
誰かどうにかしてくれるならば。
自分でどうしようもない部分を、
どうにかしてくれるならば。
国は、組織を作った。
夢を裁く組織で、
夢取り締まり委員とか何とか、
それらしい名前が上についているが、
動くのはそこに属するものだ。
通称、夢鬼(ゆめおに)と呼ばれる。
彼らは夢を監視して、
違法、不健全な夢を取り締まり、
裁く権利がある。
夢に関しては、彼らに逆らえるものはいない。
これは、その国の国民が了承した、鬼だ。
夢鬼は、夢に合わせて姿を変えるが、
共通していることがある。
それは、頭に角が生えていること。
夢鬼が来たというのをイメージしやすくするため、
これだけは一応共通としているらしい。
変なことを考えていると、夢を裁かれてしまうよ。
夢鬼がやってきて、夢を奪ってしまうよ。
その国では、そんな風に子どもをしつけるらしい。
夢鬼はどうしようもない無意識の掃除人であり、
理性の象徴とされている。
その国では、
夢まで裁かれる。
それができる国だから、
国民は安心して、眠りにつくことができる。
今は、まだ。
夢鬼は夢を裁きに今日もどこかの夢へ。
国民は、恐れつつも、今はそれを受け入れている。
あるべきかたちになるということは、それだけ魅力的なのだと、
そう、信じている。
そんな国のお話。