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監禁


ヤジマは閉じ込められた。
夢の中だろうかとヤジマは思う。
重苦しい、監獄みたいな夢だとヤジマは感じる。
感じるし、自由が利かないし、動けない。
ああ、つかまったのかと、
これなら強盗やったときに捕まっても一緒だったかなと。
ヤジマはぼんやり考える。

ヤジマは真っ暗の中にいる。
考えることができるということは、
まだ生きてるんだなと思う。
目を閉じても開いても同じ空間の中、
ヤジマは、目を閉じてみる。

夢を見ようと考える。
多分この監禁された中では、
夢だけがヤジマの自由になるもの。
夢を売り飛ばすギャングが、
そのうち抉っていくかもしれないけれど、
夢の中で夢を見るなんてこっけいだけど、
ヤジマは夢を見ようと考えた。

ヤジマの心は、記憶は、
斜陽街の過去に飛ぶ。
宝石強盗をして迷い込んだ街。
不思議な住人。
なにかと戦ったこともあった。
そのすぐそばに、いつもキタザワがいた。
何かと困らせていたなとヤジマは思う。
大型犬のような男。
頼りないくせに、
頼りない、くせにと、ヤジマは重ねて思う。
バカヤロウと心で毒づくと、
記憶のキタザワは、いつものように困った顔をする。
そして謝ったりするのだ。
何も悪くないのに。

ああ、夢なんだとヤジマは痛感する。
もう、あいつは一人でもやっていけるから、
大丈夫。
もう、あいつはこんなに困ったりしない。
大丈夫。
ヤジマが消えても、このまま閉じ込められていても、
キタザワはきっと大丈夫。
ヤジマには根拠がある。
キタザワが強い男だと、
近くで見ていたヤジマだからわかる。
だから、もう、解放してあげよう。

「ごめん」

ヤジマは空間に向かってつぶやく。
届くことがないと知っていて。
何に対して謝るのかはわからないけれど、
いろいろ、キタザワに申し訳ない気がした。

夢を見ようとヤジマは思う。
ならず者だった自分が、
幸せだった夢を、何度でも。
この監禁された空間で何回でも夢を見ようと思った。


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