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魔女


斜陽街二番街、占い屋。
ここは、いわゆる占いの館というやつだ。
占い師が何人かいて、
それぞれの手段で占ってくれる。
店内には香のにおいがたちこめ、
軽くトリップする感覚がある。

ここを取り仕切るのはマダムクイーンビーこと、
占い屋のマダムだ。
今日も今日とて、ファッションショーに出てきそうな、
不思議な格好をして、
占い屋の奥にゆったり腰掛けている。

螺子師はそんなところにやってきた。
螺子師はネジを扱う仕事。
占い屋の機材などの調整も時折する。
ライトだったり、スモークだったり、
雰囲気を作るのは、それなりに大変らしい。

「…と、はい、一通り見ました。大丈夫そうです」
螺子師は商売道具の器具を片付けながら言う。
「ありがとう、やっぱりプロね」
マダムは艶然と微笑む。
螺子師はちょっとボーっとマダムを見たあと、
ふるふると頭を振って、
商売用の表情に戻る。
マダムはそれがおかしかったらしく、
くすくす笑った。
「…なんですか」
「かわいいわね、螺子師さん」
マダムは、すっと螺子師との距離を詰めてみせる。
「…あの」
「なぁに?」
「あの、機械は、大丈夫、ですから」
「だから、なぁに?」
「俺、帰っても、いいですか?」
「だぁめ」
マダムは一瞬だけ真顔になり、
螺子師はその表情でひるむ。

ひるんだ螺子師を認めて、
マダムは笑い出した。
「冗談よ、螺子師さんをコレクションしたら、困る人がいるもの」
「ああ、はい…」
「螺子師さんならネジドロボウさんが…」
マダムは意味深に言葉を区切る。
気がつかない螺子師ではない。
「なんであいつが!」
「あら、仲良しじゃないの?」
「違います!」
マダムはころころ笑う。
「コレクションされるのも悪くないんじゃないかしら?」
「あなたにしても、あいつにしても、お断りします!」
螺子師は言い切ると、器具を片付けてさっさと帰り支度をした。

マダムはちょっと残念そうに螺子師を見ている。
螺子師は、マダムのそういうところが、
魔女みたいだと思った。


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