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審判


これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
どこかの扉の向こうの世界の物語。

夢を裁いた国は、
反乱で戦火に焼かれた。
国があったのが、そもそも夢であったかのように、
国はたちまち傾き、くずれた。

国の重要人物とされたものたちは、
最後の賭けに出た。
それは、国を今まで裏で計算してきた、
機械の神に審判を仰ごうというものだった。
この国はどうあるべきなのか。
夢を裁いたことは、よくないことだったのか。
これからどうあるべきか。
機械の神には裏表がない。
純粋な計算結果が出てくるはず。
重要人物たちは、それに賭けた。

機械の神は組みかえられる。
審判のその日に向けて。
審判の日のことは、
どこかから漏れ出して、
あっという間に広まる。
機械の神がいたことも、
機械にすべてを任せようということも、
全部漏れ出していって、止めるものはいなかった。

夢鬼は歌う獣を狩り、
裏では戦争から逃れるための夢が取引され、
国は荒廃しきっていた。
何か変えなければと、重要人物たちは思っていた。
健全なあの頃に戻らなければと。
奇跡が起こらなければいけないと。
そして、奇跡はもう、神にしか起こせないと。
人の力では、もう、何もできないと。
諦めと期待。
いろいろなものが、ないまぜになる。

歌う獣の歌が聞こえなくなっていく。
国は日に日に静かになっていく。
反乱分子のものも、
国の重要人物とされたものも、
生き残った大多数の国民も、
みんなが固唾を呑んで、
機械の神が組みかえられるのを待っている。
無意識をなくしたこの国で。
すべてを統制しようとしたこの国で、
果たして奇跡は起きるのか。

審判は下される。
無力になってしまったこの国に、
審判は下される。
機械の神に慈悲はないかもしれない。
それでも頼らずにはいられない。

計算された神に、
人ではないものに、
鬼でも獣でもないものに、
もう、この国は頼るしかなくなっていた。


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