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夢路
これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
どこかの扉の向こうの世界の物語。
国の重要人物たちは、
機械の神を組み替えなおした。
それは、人にわかる奇跡を起こすものに。
それは、最後を告げる時計のように。
スイッチが入れられる。
機械の神は、再起動される。
すべての機器がフル稼働して、
機械の神の冷たい血肉となっていく。
くずれた国を、健全な国に戻す、
そんな奇跡を皆、待っていた。
愚かしく思われるかもしれないけれど、
彼等はみんな真剣に待っていた。
「この国は、どうあるべきか」
重要人物が、問う。
機械の神は答える。
「夢に帰れ」
機械のその言葉は、呪いのように、祈りのように、
国を覆っていった。
まさしく機械の神が言ったように、
国は夢に包まれ、飲まれていった。
この国で現であったことが、
すべて夢に帰っていった。
夢と現の境目は、なくなった。
裁くものは誰もなくなって、
鬼も獣も人も、
同じように夢路を歩く。
永遠かもしれない。
有限かもしれない。
夢に帰ってきたのだと、
そう信じるには十分な時間がある。
夢は本来こういうものだった。
ゆらゆらと曖昧で、裁くものじゃなかった。
夢を裁くのは、
誰にもできないことだった。
この国自体が、おかしな夢だったのだ。
そして、夢に帰ってきた。
あるべき場所に戻ってきたのだ。
すべてが曖昧にとけて、
夢の要素になって漂う。
誰かが誰かの夢を見る。
今宵誰かの夢を見る。
そこにこの国は生きている。
審判を下され夢に帰った、
この国は生きている。
夢路を歩こう。
誰も地図のかけない、
夢路を歩こう。
そこにはあるはずのない国があった。
そこにはいるはずのない鬼がいた。
そこには歌うはずのない獣がいた。
そこには、夢があった。
矛盾を抱えた国の夢があった。
いつか目覚めるそのときまで、
夢路を歩こう。
いつか忘れてしまう、夢を見よう。
夢に、帰ろう。