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相談
言珠のことを知ろうと、
夜羽が最初に向かったのは、
番外地の砂屋だ。
風鈴がいつものように、ちりんとなっている。
店に入ると、整然と並ぶ砂の数々。
店の奥から砂屋がやってきた。
「いらっしゃいませ」
「やぁ、ちょっと相談に来たんだ」
夜羽は言珠を見せる。
「これは…砂向きではありませんね」
「これは言珠というらしくて、あるべきところに返そうと思うんだ」
「なるほど」
「あるべきところに返す、言珠はそれでいいものかな」
「と、言いますと?」
「妄想屋の戯言だけどさ、言珠が満ちる場所でありたいと思うんだ」
「満ちる」
「言珠の満足する場所、満ち足りる場所…かな」
「ああ、それで満ちる」
砂屋は納得したらしい。
砂屋は、一つ砂を示す。
「砂や石は、長い長い年月で巡ります」
「うん」
「長い時間そこに存在したとして、そこが終わりとも限りません」
「うん」
「正解なんて一概に出せるわけではないと思うのです」
「そっか」
「言珠が満ちる場所を探すというなら、それは」
「それは?」
「生きているうちに見つかれば、それは幸運だと思うのです」
「そうだね」
夜羽は微笑む。
砂屋は思う。
夜羽は妄想を聞いたり再生したりが仕事だ。
石や砂の声を聴くことは不可能だ。
黙っているだけで聞けるのかもしれないけれど、
それでも、この広い広い世界、
扉を開ければそれこそたくさんの世界が広がっているこの世界で、
夜羽は石のあるべき場所を探し当てられるのだろうか。
夜羽は言珠をしまった。
「あるべき場所にあるように。きっとどうにかなりますよ」
「そうですか」
「お邪魔しました、ありがとう」
夜羽は言い残して、砂屋を後にした。
風鈴がちりんとなった。