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大都市
それは電脳世界の話。
電脳娘々は、空中に現れた。
電脳世界の空中。
空を飛ぶコマンドさえ間違わなければ、
特に問題はない。
電脳娘々は、空の一角から、
大きな都市を見た。
中央に大きな塔。
それを取り巻くように、都市がある。
視界をコマンドで変更して、
見えるものを遠ざけたり近づけたり。
とにかく人が多い。
そして、活気があって、せわしなく話し合っているようだ。
思っているところに、
シャンジャーからのテレポート要請。
電脳娘々は要請を受けて、
シャンジャーの指定したそこにテレポートする。
都市のどこかに、電脳娘々は、テレポートを成功させたらしい。
人がさっき遠景で見たときのように、
たえず話し合っている。
それは、言葉が通じるうれしさからくるものと、
電脳娘々は思った。
「これがバベルシステム?」
「うん、どの言語も解析が大体終わってるらしく、ほぼ通じる」
「ふぅん…」
「それで、商品の流通も始まってるよ」
「商品?」
「ソフトウェアとか、ネット内のアバター装飾とか」
「世界が変わるかしら」
「わからない、ネットワークで言葉が通じることの、大きさがわかんないとね」
電脳娘々は改めて都市の一画を見る。
活気。言語は学ぶ必要なく、
話す言葉があれば、それがみんなに理解してもらえる。
その気になれば、
どんな人とも話すことができる。
「すてきね」
「そうだね」
「世界が一つになるとは思えないけど」
「けど?」
「うまく言えない。ただ、理解する苦労は減るかなって思った」
電脳娘々はプログラムで作られたレモンを一個手に取った。
味覚にもきっちり作用しますよ。と、バベルシステムが解析した言語で話された。
電脳娘々はレモンをかじった。
プログラムのレモンは、現実のようにすっぱかった。