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曲芸
これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
どこかの扉の向こうの世界の物語。
螺子師と螺子ドロボウは、扉をくぐって、砂漠にやってきた。
カラカラの砂漠。
砂と岩とぎらぎらの太陽。
遮るものが少ないそこで、
遠くにサーカスのテントを見つけた。
サーカスは、オアシスの近く、
小さな町のようになってテントが張られていた。
動物たち、曲芸師、ピエロ。
それに加えてどこから来たのか、
客もそれなりにいて、
サーカスの一座のテント周辺は、
暑くカラカラしていても、にぎわっていた。
呼び込みの男にチケットを見せて、
中に入れてもらう。
テント周辺で火吹き男や早撃ちの女性などが、
その技を見せている。
中心にひときわ大きなテント。
どうやらそこがメインステージらしい。
「はい」
不意に何かを渡されたのを、
螺子師は疑いなく受け取った。
それは冷たいジュースとポップコーン。
渡したのは螺子ドロボウだ。
「そこで売ってたんだ。飲み物は欲しかったでしょ」
「盗んでないだろうな」
「盗むのは螺子だけです。さ、いこうか」
螺子師は複雑な顔をして、
冷たいジュースをすすった。
果実の甘みと酸味が絶妙だった。
テントの中は意外と涼しく、
今まさにショーが始まるところだった。
始まればそれは夢のような曲芸の数々で、
綱渡り、空中ブランコ、動物の曲芸、
自転車にたくさんの美女が乗り、
椅子は高く積み上げられ、
ナイフ投げは見ているものをハラハラさせる。
どこを見ても見飽きることのない、
本物のサーカスがそこにあった。