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翻訳


それは電脳世界の話。

一通り、バベルシステムの恩恵を目の当たりにして、
シャンジャーと電脳娘々は、
時代が変わるかもしれないという結論に落ち着いた。
ただ、このシステムが電脳世界を出て、現実世界まで使われるようになるには、
まだ時間がかかるかもしれない。
それでも、画期的なシステムで、
世界の言葉の壁をバベルシステムが飛び越えるかもしれない。
期待は十分もてる代物だ。

シャンジャーは、管理人室のメンバーに話をつけたらしい。
ちょっと話をしていこうということになった。

テレポートの概念で距離をショートカットする。
電脳世界ならではだ。

管理人室の前に、シャンジャーと電脳娘々は描画された。
古風にノックを二つ。
「どうぞ、あいてるよ」
声がしたので扉を開く。
そこには、若い男女が宙に浮かぶディスプレイに向かって手をかざしていた。
人数は多くなく、8名ほどだろうか。
「こんにちは。僕らが管理人だよ」
「僕はシャンジャー、アルコールに属しています」
「電脳娘々。斜陽街で電脳中心やってます」
「二人のことは知ってるよ。技術的な面は相当なものだね」
「知ってるんですか」
電脳娘々がききかえした。
「言葉は新しいものも古いものも、国籍も超えるものだからね」
「だから、何でも知っている?」
「そういうこと。ここの管理人で、情報と言葉をシステムに送ってる」
「システムには知識がすべて?」
「バベルシステムは、まだ未熟だからすべてではないさ」
電脳娘々は、管理人の男性のアバターの目を見た。
アバターだとわかっているのに、その目には希望がともっているように思われた。

「翻訳技術はどんどん上がっているよ。世界がバベルシステムでつながる日も近いね」
管理人は、そうして話を結んだ。


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