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討伐
これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
どこかの扉の向こうの世界の物語。
アキは形ばかりの勇者の儀を行い、
勇者という肩書を得た。
賢皇帝は、もう遠くになってしまい、
話すこともかなわないかと思うと、
それは少しさびしくもあった。
しかし、アキは勇者となり、魔王討伐に行かなければならない。
みんなのために魔王を退治して、
みんなの安心できる国にしないといけない。
アキの正義感と義務感。
アキがやらなければならないという、純粋な志。
勇者アキは、まぶしいほど透明でまっすぐだ。
アキは魔王討伐の仲間を募った。
気のいい仲間が何人か集まった。
出身はみんな国のあちこちばらばらだけど、
魔王を倒すために命をかけてくれる、
アキはその命を決して無駄にはしないと誓った。
それでは何から始めようか。
アキは宿の酒場の一角を借りて、
仲間たちと会議を始めた。
「魔王は剣が当たらないと聞きます」
アキが昔賢者から聞いたことを話す。
みな、神妙にうなずく。
「賢者が言うことには、言葉で魔王を閉じ込めているといいます」
「解放するのは、危険ってわけか」
「なおかつ、魔王は今、見えない状態にあるといいます」
「それも言葉の力?」
「おそらく」
会議をしばらく続けた結果、
まずは賢者に会おうということになった。
言葉の力で魔王が見えない状態ならば、
逆も可能かもしれない。
賢者ならば、それができるかもしれない。
アキの魔王討伐の旅が始まった。
みんなのため、賢皇帝のため、賢者のため、国民のため、
それがすべて、アキのためでもあるのだ。