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禁猟区
電脳のゲームにアクセスする少女3人。
かもめ。あおい。あかね。
彼女たちのアバターは少女。
現実の姿は、誰も知らない。
けれど、彼女たちは少女として電脳にいるし、
その仮想空間で少女である以上、
現実を突きつけることの方が、野暮だ。
仮想空間としての電脳と、
現実をイコールで結ぶ必要は、たぶん、ない。
彼女たちはいろいろな世界を遊ぶ。
冒険だってする。
ステータスにかかわるような、
戦いだってするし、
ゲーム内の通貨を稼ぐことだってする。
主に珍しいアイテムを手に入れての、
換金だったりする。
3人は、チャットをしながらある空間に出た。
そこはエネミー反応が全くないところ。
モンスターを倒して、
お金や経験値や名声という目的は持っていないけれど、
そこはぽっかり、敵がいない。
「なんだろう、ここ」
かもめがあたりを見る。
エネミーはいない。
けれど、異形のもの、モンスターはいる。
「襲ってこないね。いつもこの距離なら戦闘なのに」
あおいは武装を解く。
「エネミーでない、ってことかな」
あかねもそういって武装を解いた。
3人は、敵がいないこの空間のことを検索。
すると、禁猟区という情報が出た。
ただし、そこにたどり着いたもの情報はまだなく、
言葉だけが独り歩きしているとあった。
「あるのにね、ここに」
「見つけた人はいるんだよ、きっと」
「ここを壊されたくないから、誰も言わないんだよ」
3人はうなずいた。
ここは禁猟区。
すべての命が生きていていい、
御伽噺のような場所。