箱物語(仮)17


いつもの記録追跡課の待機室。
暖房が程よく効いている。
ルカは自分の記録を電子箱にバックアップする。
ヤンはのんびりと本を読んでいる。
カラットは、待機と称して眠っている。

外は冬枯れの風景。
チーム・パンドラの箱には、
年末も年始もない。
クリスマスもなかった。

まぁ、建前は。

違法記録所持者がいれば出て行くし、
そういう意味では休みはない。
けれど、クリスマスには、
シジュウからイチゴたっぷりのケーキが差し入れされ、
カラットは大いに喜んだものだ。
きっと年末も、なにか…
ルカがそう思うと、
記録追跡課の待機室宛に届け物があるとの放送が入った。
ルカと、ヤンで荷物を取りにいく。
荷物の箱の送り主は、シジュウからだ。
大きな箱だ。

それなりに重い箱を、ヤンが持って戻る。
「何でしょうね」
「さぁ?」
本当に、ルカには見当もつかない。

待機室に戻ってきて、
おもむろに箱の封を開く。
そこには、真新しい…掃除用具が。
ルカは同封してあったメモを読む。
「年末年始ご苦労様。大掃除してください。終わったら、お飾りもよろしく」
ヤンは苦笑いした。
「続きがあるわ。記録追跡課は一日の午後から出勤」
「ふむ」
「腕によりをかけた、おせちとお餅を用意しています。シジュウより」
「おせち作ってるんですか。シジュウさん」
「そうらしいわね」
「ルカさんは、おせちとか作らないんですか?」
ルカは黙ってそっぽを向いた。
ヤンはなんとなく察した。
「さて、大掃除しますか」
「そうね。カラット、おきなさい」
カラットは目を覚まし、うーんと伸びをする。
「何?」
「シジュウから。大掃除しなさいって」
「俺掃除苦手ー」
「とりあえず、机の上から何とかしなさい」
「へーい」

記録追跡課の一年。
一年の終わりを掃除してつつがなく終え、
一年の始まりを、また、記録追跡課ではじめようとしている。
シジュウは、そんなところにこだわり、
ルカもヤンもカラットも、
そんな変な上司が嫌いではない。

ルカはタカハを思った。
タカハの家も大掃除しないとな、と。
おせちは無理でも、煮物の一つも作ってみるかなと。

そんな、チーム・パンドラの箱の年末年始。


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