箱物語(仮)29


ルカは飴玉を一つ、口に放り込んだ。
のど飴だ。
スースーして甘い。

ルカは、のど飴をなめるのが好きではない。
のどがいかれていなければ、
変にスースーする飴などなめたくはない。
ルカはのど風邪の軽いのをひいている。
いつものジャスミン茶が飲めないのが、
ルカをいらいらとさせていた。

「ぶえっくしょい!」
カラットが派手なくしゃみをした。
多分カラットが風邪を持ち込んだのだろう。
まったく持って迷惑だとルカは思った。

「は、は、ぶえっくしょい!」
カラットが間髪いれずにくしゃみをした。
ずーずーと鼻をすする。

ルカは席を立った。
つかつかとカラットの席に歩いていく。
「いい加減仕事に支障をきたすわよ」
カラットは、ぼんやりとした目で、ルカを見る。
「とにかく、薬を飲むなり、マスクつけるなりしてほしいわね」
「…ういーっす」
カラットは、返事だけした。
行動する気はないようである。

ルカは、のど飴をがりりとかんだ。
ちょっといらっときたらしい。

「返事だけ?」
「…あいあいさー」
「行動は?」
「…あー…うー…」
カラットは、机の上に頭を乗せた。
本格的に、風邪らしい。

「ルカさん」
後ろから声がかかった。
ヤンだ。
小さなお盆に、薬の瓶と水が入ったコップ。
「カラットに薬を持ってきました」
ルカは、そっと横に退く。
「カラット、これ飲んで、毛布も必要ですか?」
「あー…みずー…」
「薬飲んで、シジュウさんも、休んでいいといってましたよ」
「シジュウー…」
「薬飲んで」
「のむー…」
カラットはもそもそ頭を起こし、ヤンから薬をもらった。

ルカはそこまで見届け、
自分の席に戻った。
「あ、ルカさん。ジャスミン茶をいれてありますよ」
ヤンから声がかかる。
ルカの席には、あたたかいジャスミン茶が。
ルカは器を手に取り、そっとにおいをかぐ。
いつもよりにおいが鈍い。
どうやらルカの鼻も詰まったらしい。
ルカは顔をしかめた。

ルカはのどと鼻との症状を自覚しつつ、
パンドラの箱のデータベースを見ることにした。
自分の過去の箱に、薬となる記録がないか。
あったらもうけものと思ったし、
カラットのようになるのは、真っ平ごめんと思った。
電子箱を起動させようとすると、
端末に連絡が入る。
ルカは端末から記録をダウンロードする。
『皆さんゆっくり休んで、風邪を治してください』
シジュウの指令だ。

ルカは大きくため息をついた。
のどがひりつく。
「カラット、ヤンに送ってもらいなさい」
ルカは帰る支度をする。
ヤンも、なんとなくわかったらしい。
カラットは相変わらずだれている。
「シジュウから、休めってお達しよ」

ルカはくしゃみを一つ。
きっと誰かが噂をしている。


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