箱物語(仮)37


いつもの待機室。いつものルカの席。
ルカは新聞を読んでいた。
暴露などの記事が増えた気がする。
暴かれることが増えたのは、神経探偵が絡んでいるのかもしれない。
神経をつなげば、彼はさまざまのことが出来る。
そして、兄弟であろう、ミスター・フルフェイス。
こちらは記録を延々ため続けて、求めるものに与えている。
放電と充電。
ルカはそんな風にイメージした。

「珍しいっすね」
カラットがルカに声をかける。
ルカは新聞をたたむ。
「新聞って珍しいっすね」
カラットは冷えたコーラを飲んでいる。
あんまり思うところがあるわけでなし、
気がついたから声をかけたに過ぎない。
「普通は電子箱に頼るんだけど。過去の箱の容量圧迫したら大変だし」
「そうか、それで新聞ってなかなか見ないんっすね」
「シジュウは毎日読んでるらしいわよ」
「うっそマジで」
「シジュウの箱は、成長を続けているという噂よ」
「まじっすか」
「私もシジュウの箱が大きすぎて見えなくなるもの」
「うっわー、ルカでも見えないんだ」
「電子箱を連ねて、シジュウ並みに記録集めてるのもいる」
「あのもぐらっすか?」
「ミスター・フルフェイス」
「いいじゃないすか、もぐらで」
「本人には言わないことね」
「うーい」
カラットは気の抜けた返事をして、また、席に向かった。

充電放電。対のような兄弟。
それから落下する圧縮解凍。
あれは一体何がしたいんだろうか。
何度も圧縮と解凍をされて、
劣化されつくした記録。
迷う箱の持ち主の人間。
そして、迷わず落ちていく感覚。
真っ暗の中に落ちていく。
怪盗・アーカイブ。
あるいはアーカイブも、
記録を見たいのかもしれない。

ルカは思う。
圧縮と解凍を乱暴に繰り返しても、
輝くを失わない記録。
電子箱でなく、人の過去の箱に、
どうやっても輝き続ける記録。
箱を展開し、元に戻し、
そんなことを繰り返していると、
ルカもそういう記録を見たくなる。

移ろう記録でなく、絶対の記録。
シジュウなら答えを持っているだろうか。

ルカは新聞をたたんで置いた。
切り替えるには、ジャスミン茶が一番だ。


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